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 ゴトゴト走る路面電車でコトコト煮込んだおでんを楽しむ「走る屋台」として親しまれる豊橋鉄道(愛知県豊橋市)の名物電車「おでんしゃ」が4日夜、今季の運行を始めた。コロナ禍でイベント電車を自粛する動きもあるが、運行規模を大幅に縮小するなど感染対策を徹底し、全国に誇る冬の風物詩を守る。

 発着場所の豊橋駅前ではこの日夜、数十個の赤ちょうちんをぶら下げたレトロ車両に、係員による検温を済ませた男性らが赤のれんをくぐって乗り込んだ。往復9・4キロの道のりを80分かけて楽しんだ。

 全国的にも早い2007年度から運行を始めて14年目。「やめるのは簡単だが、期待に応えたい」と、必要な感染対策を講じることで運行にこぎ着けた鉄道部の梅村仁朗部長は「これまでのような密にならないスタイルになるが、車内の雰囲気や車窓からの眺めを楽しんでほしい」と話す。

 豊鉄は新型コロナウイルスの影響で、夏恒例の「納涼ビール電車」が1993年の開始以来初めて全休を余儀なくされた。冬の感染拡大が心配されるなか、県内外から約4千人を集めてきた「おでんしゃ」についても慎重意見があった。

 一方、例年楽しみにしているリピート客らから運行を求める声が寄せられていた。コロナ禍で乗客数の減少が続き、路面電車の存続も危ぶまれるなか、地域密着を掲げる企業の「心意気」でひねり出した答えが、採算割れ覚悟で規模を縮小しての運行だった。

 運行期間は例年の半分となる1月末までの2カ月間。運行日も金土日の1日1便に限り、便数は昨冬の149便から2割に満たない24便に減らす。「3密」を避けるため、1便あたりの乗車定員を従来の30人から16人にほぼ半減させる。地元特製のちくわのおでんやつまみ弁当、飲み放題の生ビールなどメニューは変わらないが、ジョッキは紙コップに変更。車内に飛沫(ひまつ)予防の透明シートを張り、カラオケは禁止とした。

 豊鉄によると、予約開始当日に全席完売したという。担当者は「お客さんの反応を確かめ、来夏のビール電車の可能性を探りたい」と話す。

 豊鉄グループは今年度、競争激化で将来の収益確保が見通せない豊橋駅前のホテルを閉鎖する一方、路面電車や路線・観光バスの車庫をめぐる巡回ツアーを初めて企画するなど、収益の確保に腐心する。ホテルが入っていた建物の一部を小規模賃貸オフィスに改装する案などを検討している。(床並浩一)

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