[PR]

 コロナ禍で山小屋が閉鎖されるなどして登山者の減少傾向が見られる一方で、今年の埼玉県内の遭難件数は前年と比べて増えている。県警は注意を呼びかけるとともに、万が一の備えとしてスマートフォンでも気軽に登録できる登山届を出すよう呼びかけている。(宮脇稜平)

 地域総務課によると、10月末までの登山届受付数は約9700件で、前年同月比で約3200件少ない。登山届の提出は義務づけられてはいないため登山者の正確な数は不明だが、「緊急事態宣言中だった4、5月を中心に大幅に減ったことは想定される」という。

 一方で、11月末までの県内の遭難は前年同時期より3件多い50件。今年は昨年と比べて減少傾向だったが、11月に入って増加に転じたという。

 日本山岳会埼玉支部の大山光一支部長(71)は「普段は登山をしない層がキャンプ感覚で来ていることも影響しているのでは」とみる。コロナ禍で密が避けられる野外のレジャーとして登山の人気が高まっており、9月の4連休では一部の山小屋で混雑するなど、人気山岳スポットの「一極集中」の傾向がみられるという。

 埼玉、山梨、長野の県境にある甲武信ケ岳で山小屋を運営する山中徳治さん(71)は、山の知識を得て登ることの重要性を強調する。「積雪量などは山間部と下界で全く違う。同じ感覚では危険だ」

     ◇

 県警が提出を呼びかけている登山届は連絡先や登山開始時刻、ルートなどを記載するもので、用紙や書き方に決まりはない。遭難が発生した際の捜索活動の手掛かりとして使われ、山小屋に設置されたポストや各警察署に提出する。パソコンやスマホからインターネット上でも入力できる。

 ただ、地域総務課によると提出数は減少傾向で、ネットでの入力も10月末時点では全体の約15%と低調だ。同課の田中久次席は「低い山でも遭難の危険性はある。手軽に出せるので、ハイキング程度でも届け出てほしい」と話す。

 県山岳・スポーツクライミング協会の天野賢一専務理事(56)によると、コロナ禍では大人数での登山を控え、1人や2人といった少人数で登る人が増えているという。特に単独での登山では、自分の居場所を知らせる登山届の提出は身を守るためにも重要だ。天野さんは「単独では遭難のリスクが非常に高くなる。登山届を作ることでコースの危険性や装備を再考できるという利点もある」と指摘する。

関連ニュース