鉄学で高める備えの意識 鉄道防災に取り組む和大准教授

藤野隆晃
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 地域の公共交通を生かしながら、防災意識を高めるために――。和歌山大の西川一弘准教授(42)は、「鉄学」と名付けた、独自の鉄道防災企画に携わる。ただ学ぶだけでなく、地域の活性化につなげようとしている。

 大阪府泉佐野市出身。和歌山大、大阪市立大大学院を卒業後、和歌山市内で就職した。その後、和大から田辺市内に地域連携拠点を作る際に声をかけられ、転職。講師を経て、現在は准教授を務める。公共交通を中心に、地域の課題をいかに解決し、より良い地域にするかに関心があった。

 小学生の頃からの鉄道好きでもある。特に、列車の走行中の音が好きという。「You Tube」で列車の走行音を流し、作業用のBGMにするほどだ。

 転機は東日本大震災。津波で沿岸の路線が被災した。和歌山を走るJR紀勢線も海沿いを走行する。津波から乗客を守る仕組み作りが必要だと感じた。先輩研究者からも「鉄道好きなあんたが、路線を津波から守らないとあかん」と背中を押された。

 想定では、高い津波がほんの数分で押し寄せる区間もある。乗務員の指示を待つだけでなく、乗客が主体的に逃げる必要があると考えた。目を付けたのは、通学で利用する高校生。彼らが避難時の中心になればと、2012年から高校生も参加して、実際の列車を使った避難訓練を始めた。

 ただ、「津波の危険性があるのなら、廃線にすれば良い」という意見も出かねない。地域での移動手段の選択肢を残すため、訓練を地域活性化にもつなげようと16年から始めたのが「鉄学」だった。ツアー形式で参加者を募り、訓練だけでなく、地域の歴史や魅力も伝える。地元住民だけでなく、鉄道や旅行が好きな人の参加も募り、防災意識を持つ人の裾野を広げている。

 広島や長崎が平和学習の中心であるように、和歌山が鉄道津波防災の中心になることを目指す。「世界的な学習拠点になることに貢献したい」藤野隆晃