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 頭に巻くタオルは、厚手より薄手。「公民館でもらった生年祝いの記念タオルなんかが、ちょうど良い」。平安座島(沖縄県うるま市)で生まれ育った田村明美さん(72)が「ポーポー」を焼く時のいでたちだ。島でポーポーを売って約15年。同郷の夫、良章(よしあき)さん(享年71)もかつて、同じ格好で手伝った。「髪の毛が少ないのに『商売なんだから、ちゃんとタオルしないといけないよ』って言う人で」。遺影を見上げ、明美さんは思わず泣き笑いする。

 平安座のポーポーは「サングヮチポーポー」と呼ばれる。旧暦3~5日、毎日焼いて重箱に詰め、仏壇へ供える。親族が集まるときの定番菓子でもある。ポーポーといえば薄力粉が主流だが、平安座では小麦粉を皮ごとひいた全粒粉を混ぜる。

 大きかったり小さかったり、穴が開いていたり開いていなかったり。その時々で違う「わが家のサングヮチポーポー」で育った明美さん。結婚を機に良章さんの母親からレシピを習った。材料を混ぜたら、そのまま冷蔵庫で7~8時間寝かす。生地を焼く時は中火。モチモチ感が出て、表面に程よく穴が開いた。

 明美さんは、子育てが一段落した約15年前から島内の商店にポーポーを卸すようになり、2014年に「ポーポー屋 ターミー」をオープンした。傷みにくいように、時に重さ6キロを超える生地でも手を使わず、へらで混ぜる。少しでも焼きたてを届けるため、徹夜で焼く日もある。

 「必要だから注文が来る。作らんといけないという気持ちかな」と話す明美さん宅には、直径約60センチの大鍋がいくつも積み上がる。

 仕込みを手伝ってきた良章さんは、体調を崩して入院しても「お店は開けなさい。通り掛かりのお客さんがいるんだから」と繰り返した。とうとう店を閉めた後も、明美さんは自宅の台所で注文に応えてきた。

 多めに作って差し入れを続けてきた公民館では今夏、ポーポーで島おこしをしようという話し合いが始まった。「きっと良章は言いますよ。『おい! みんな頑張ってるか!』って」。良章さんが亡くなって1年。明美さんは、そろそろお店を再開しようかと考えている。(沖縄タイムス)

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