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 画像投稿SNS「インスタグラム」を通じて、宮崎県高千穂町の魅力を発信する旅館神仙(しんせん)=同町三田井=のおかみ佐藤久美さん(46)。コロナ禍で客のいない時間を利用してSNSの使い方を研究し、フォロワーは約8カ月で1万人近く増えた。遠のいていた宿の客足もV字回復中という。

 旅館神仙は、完全個室の全15部屋のうち、11部屋に露天風呂、4部屋にはヒノキの内風呂を備えるなど、ハイクラスの宿として知られている。亡き祖母トシさんの発案で父功宏(かつひろ)社長(68)が1973年に創業した。12年前、おかみに就任。自ら接客する傍ら、従業員30人をまとめている。

 幼い頃から、トシさんに「将来はおかみになるように」と言われ続け、反発した時期も長い。だが、旅館を営む両親を間近で見て育ち、家業を継ぐ覚悟は固まっていった。高校卒業後はカナダに2年間留学し、専門学校で通訳翻訳を学んだ。帰国した20歳の時に両親のもとで働き始めた。

 新型コロナ感染拡大は旅館業に暗い影を落とした。ゴールデンウィークは開館以来初の休業を決断。売り上げは約9割減ったが、「起きたことは覆せない。いまの自分たちにできることをしよう」と発起。客室を改装し、オンラインでの情報発信力を強化しようと考えた。専門の講座も受け、半年かけてSNSの効果的な使い方を研究した。

 「高千穂が『コロナ収束時に真っ先に行きたい』と思ってもらえる場所になってほしいと思いました」

 SNSのプロフィル内容を改めたり、投稿する文章を吟味したり。気さくにプライベートなことも載せるよう心がけ、ハッシュタグの付け方にまで工夫を重ねた。毎日投稿を心がけるのは、「これまでしてきたことに意味を持たせるのは続けることだと思うから」。

 アカウント名「tabisuru_okami」は、じっとしていられない行動的な性格を表現した。また、「おかみは旅館に常にいるべきだ」という、かつて自分も抱いていた固定観念を覆していこう――。そんな自戒の念も込める。「いろんな人と出合い、人間関係や視野を広げたいと思って名付けました」

 2月のフォロワーは600人ほどだったが、10月には「当初は無謀と思っていた」1万人の大台を突破。投稿した画像が、1千人以上にお気に入り登録されることも珍しくない。

 SNSでの情報発信が軌道に乗る頃、旅館の客足も回復し始めた。9月以降、単月売り上げは各月の過去最高を記録し続けている。宿泊客に「インスタグラムを見た」と声をかけられることも多くなった。「自分にとって、SNSは相手と直接つながれる神器のようなものになりました」

 10月下旬には、町内で観光業に携わる人向けのSNS活用セミナーを開いた。「知られていない高千穂の魅力はたくさんあります。それぞれの年代や立場の視点で見つけた魅力を発信して、地域総力戦でPRしていきましょう」。参加者にそう語りかけた。(浜田綾)

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