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 新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増えたとき、誰を集中治療室に入れ、誰に人工呼吸器をつけるか。医療スタッフがとるべき判断の手続きを、日本集中治療医学会などのグループが提言にまとめた。医師ひとりでなく、チームで判断することなどが柱だ。ただ、具体的な判断基準は示しておらず、実際の場面では、医療現場が究極の選択を迫られる。

 提言は、同学会の臨床倫理委員会のほか、厚生労働省研究班、体外式膜型人工肺(ECMO)の治療を支援する「エクモネット」が合同でつくり、11月に同学会の雑誌で公表した。題は「新型コロナウイルス感染症(COVID―19)流行に際しての医療資源配分の観点からの治療の差し控え・中止についての提言」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/27/6/27_27_509/_pdf/-char/ja別ウインドウで開きます)。

よい結果期待できる患者「優先」

 提言が想定するのは、医療機器やスタッフなどの医療資源が払底する「最悪の事態」だ。治療による利益の有無も考慮した上で、「よりよい結果(健康状態の回復)が得られると期待される患者に優先的に資源を振り分けるという観点から、人工呼吸器などの生命維持装置を用いた治療の差し控え・中止が発生する状況も想定しなければなりません」とする。

 提言は7項目。一つ目は、治療の差し控え・中止の判断は、個人ではなく医療・ケアチームの議論を経てすること。二つ目は、医学的に適切であり妥当で、患者の意思、公正性なども考慮して判断することを求める。このほか、患者の意思に基づいて医療を進めることを基本とし、患者に判断能力がなければ、家族らの合意に基づくことなどを挙げる。

 同学会臨床倫理委員会委員長の澤村匡史・済生会熊本病院集中治療室長は「未曽有の事態でも、治療の差し控え・中止が簡単に行われてはいけない。個人で決めると、独善的になることがあり、危険だというメッセージでもある」と話す。

 一方、提言では治療の差し控え・中止の判断基準には触れていない。澤村さんは「様々な状況が考えられ、前もって具体的に決めるのは難しい」と説明する。患者の状態や医療資源の状況など、現場の医療スタッフでなければわからないことも多いからだ。

 厚労省研究班の協力員の児玉聡・京都大准教授(倫理学)も「『医療資源配分の観点から』と書いてはいるが、配分が実際にどうなされるべきかには踏み込んでいない」と話す。「医療資源が足りない状況では、一人でも多くの患者を救うことが一番大きな目標になる。ただ、救うといっても、人工呼吸器を外せるぐらいの回復を指すのか、その後の余命や生活の質なども考慮するのかで、判断がかわってくる。個人的にはある程度の基準を準備した方がよいと思うが、一学会に担わせるのは難しいと思う」という。

 提言が参考にしたのが、厚労省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000197665.html別ウインドウで開きます)だ。がん末期や老衰などで死が近づいた人の医療やケアは、医療・介護のスタッフと十分に話し合い、患者本人の意思決定を基本に進めることを最も重要な原則とする。

 このガイドラインでも、治療の差し控え・中止などの具体的な判断基準には触れず、チームで話し合うといった判断の手続きを記載している。

治療を頼む意思 尊重できる?

 ガイドラインをまとめた検討会で座長を務めた法律家の樋口範雄・武蔵野大特任教授は今回の提言について、「医療的な緊急性、必要性は数字で表しにくい。形式的なルールをつくっても、現場では使えない。そういう意味では、やわらかな内容にせざるを得ない面がある」と理解を示す。

 その一方で、患者の意思や家族…

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