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 このグルグル渦巻きは何? 現役大学生のアーティストが約250本のネオン管を使って制作した作品はいったい……。

 よーく見ると、親しみのわく「三つの丸」が見えてきます。

 東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで開催中の「ミッキーマウス展」の、「未来=& BEYOND」のゾーンで展示されている大きな作品だ。

 ミッキーマウスの両耳と顔を象徴的に表現した三つの丸の「ミツマル」をイメージして、ネオンアーティストのWakuさん(24)が2カ月がかりで制作したものだ。Wakuさんは青山学院大学で文化政策を学んでいる。大学で勉強しながら、ネオン管を使ったユニークな作品を作っている。今回は「誰もみたことがない、まったく新しいミッキーマウス」というテーマに、5人の日本人アーティストたちがそれぞれ挑戦した企画の一環で、「これから」のミッキーマウスを想像して手がけた。

 作品は縦2・3メートル、横3・4メートル。まっすぐなネオン管をバーナーで200度近くまで熱し、管に空気を送りながら、ゆるやかなカーブを描くよう加工する。ほどよいさじ加減が難しく、とても神経を使う作業だ。「曲げる角度を調整するのに苦労しました。何本も失敗しましたね」

 使ったネオン管の総数は約250本。1本ずつ不燃性の木の板に取り付けた。板に小さな支柱を立て、細いワイヤでネオン管を支柱に結びつけた。「力が強すぎると、管が割れてしまいます。取り付けだけでも、8日間ぐらいかかりましたね」

 ネオンのやわらかな光と、「ミツマル」のミッキーマウス。ちょっと異質な組み合わせだが、相性がいいという。「『ミツマル』は世界の人たちに愛されているミッキーマウスを表す象徴的な形。ネオン管も店名や物を看板で象徴的に表すのに使われていて、親和性があると思いました」

 高校時代、出歩いた東京の上野や新宿の街でネオンの光にひかれた。「自分の部屋にもほしいな、ネオン管をつくれないかなと思って仕組みをいろいろ調べて、面白そうと思ったんです。でも設備が必要と分かって……」

 大学入学後の19歳のころ、東京都大田区のシマダネオンで週1回、ネオン管の制作の修業を始めた。翌年、大学を1年間休学し、米ニューヨークに渡って、ネオン管の制作を学ぶ。帰国後も、大学で学びながら、新装の渋谷パルコや、ユニクロ銀座店のネオン制作に関わるなど、積極的に活動の幅を広げている。

 そんなWakuさんが、ネオンにひかれるのは、実家のお寺の本堂での「光の原体験」にあるという。東京・江戸川のお寺に生まれ、現在も暮らしている。「小さいころから、本堂で光に照らされ、黄金色に輝いていた仏さまを見ていました。ネオンの光もものすごく神聖に感じられるんです。僕の原体験と通じるものがあります」

 今回の作品のネオン管の光も「人を包み込むような光にしました」という。

 作品のタイトルは「Untitled」。あえて「表題のない」「無題の」という意味を込めたのは「どんな表情なのか、どの角度から楽しんだらいいのかなど、自由に見てほしいと思いました。自分の中のミッキーマウスを膨らませてほしい」

 未来のミッキーマウスに込めた気持ちは「ネオンの文化を未来につなげていきたい」という熱い思いだ。(山根由起子)

Wakuさんプロフィール

 1996年生まれ。2017年から東京のシマダネオンで制作を開始。翌年、米ニューヨークのブルックリングラスに拠点を移し、デビット・アブロンに師事。現在は東京を拠点にネオンサインの制作をしながら、ネオン管を使った「光の原体験」に重きを置いた作品を発表している。青山学院大学総合文化政策学部に在学。

ミッキーマウス展 THE TRUE ORIGINAL & BEYOND

 2021年1月11日まで、東京・六本木の森アーツセンターギャラリー。ミッキーマウスのスクリーンデビュー90周年を記念して、米ニューヨークで開かれた展覧会からの作品群を中心に「原点」「現代」「未来」の三つのゾーンで構成。日本展では、Wakuさんのほか、イラストレーターの大島智子さん、コラージュアーティストの河村康輔さん、ペインターの添田奈那さん、カリグラファーの「書道家 万美」さんが創造した新しいミッキーマウスも公開。日時指定制。朝日新聞社など主催。詳細は公式サイト(https://mtob.exhibit.jp/別ウインドウで開きます)。