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 今年は人里にクマがたびたび出没しました。人に危害を与えたり、農作物を荒らしたりして「クマは怖い」と感じた人も多いでしょう。人間とクマの「共生」は可能なのか。マタギをテーマにした小説で知られる仙台在住の直木賞作家、熊谷達也さん(62)に聞きました。

拡大する写真・図版野生のツキノワグマ(青森県自然保護課提供)

クマも気の毒だと思います

 僕はクマが人に遭遇し、時に人を襲ったことが騒がれているのをみて、気の毒だなあと思うんです。人にではなく、クマにです。人とクマの「世界」の間にあった里山というグレーゾーンの荒廃で、クマは自分の縄張りから出るとすぐ人の世界に入ってしまうことになる。「ああ、えらいところに来てしまったなあ」。クマもそう思っているのではないでしょうか。捕獲・駆除されてしまうわけですが、相応のルールのもとで殺してあげてほしいですね。

 「相応のルール」の念頭にあるのは、マタギたちの狩猟文化です。僕はマタギを題材にした小説「邂逅(かい・こう)の森」執筆のための取材で、新潟の「マタギ村」の人たちと一緒に山に入ったことがあります。十~二十数人の集団でクマを追い込む、伝統的な「巻き狩り」に同行しました。

 雪が残る地面にクマの足跡を発見したときは直感的に恐怖を抱きました。「ここは彼らの領域だ」と、ひしひしと伝わる。シカやイノシシの足跡とは意味が違うんです。

「クマの姿を間近で見たとき、どんな感情がわき起こったと思いますか?」。熊谷さんは記者にこう尋ねました。身をもって体感した「覚醒」のエピソードやクマとの共生について、記事の後半で語ります。

クマが果たしてきた役割

 どうしてクマは怖いのか。身も…

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