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 孫文が創立し、台湾で長く政権党の座にあった国民党が迷走している。世論の嫌う「中国に融和的」とのイメージ払拭(ふっしょく)は進まず、資金難や若者の支持低迷と合わせた「三重苦」の様相だ。打開の道筋は、あるのだろうか。(台北=石田耕一郎)

 10月下旬、台北にある国民党本部で若手職員向けの勉強会が開かれ、党青年局長の男性が発言を求めた。

 「香港支援のデモに党として参加を求めたら、幹部から『今は時期が悪い』と反対された」。幹部の反対は中国への配慮からとみられる。男性は個人の立場で赴き、与党の民進党や、少数政党の幹部らが現場でデモへの支持を訴えるのを、やるせない思いで聞いた。

 勉強会は低迷する党勢回復をねらい、党が9月に始めた。各界から講師を招いてアドバイスを聞き、再建策を話し合う。準備を担う党国際事務部の何志勇副主任は「政権から転落し、党に欠けているものを洗い出す狙いがある。勉強会の手法は民進党に習った」。

売りは中国とのパイプだが…

 国民党は、馬英九(マーインチウ)前総統時代の2015年に中国の習近平(シーチンピン)国家主席との会談を実現させるなど、中国との対話のパイプを売りにして、公務員や財界を中心に支持を得てきた。

 ただ、性急な対中接近や、香港に対する中国政府の強硬姿勢を見た世論に離反され、総統や立法院(国会)選挙で16、20年と連敗。蔡英文(ツァイインウェン)政権が有権者の反発の中で進める成長促進剤を使った米産豚肉の輸入解禁をめぐり、最近の支持率は上昇傾向だが、台湾民意基金会の11月の調査では21・2%。民進党の31・9%とはまだ差がある。

 今年3月から党を率いる江啓臣(チアンチーチェン)主席(48)は世論に中国への警戒感が強いことを意識し、中台が「一つの中国」に属する、と認めた対中合意の見直しを模索した。だが、馬氏ら党重鎮から反対され、9月の党大会では見直しを断念。合意を尊重する対中融和路線の維持で妥協した。

 一方で、江氏は同じ9月、中国との対話窓口の役割を担うフォーラム「海峡論壇」に党重鎮の元立法院長(国会議長)の派遣を決めていたにもかかわらず、直前に撤回した。10月には蔡政権に対し米国との「国交回復」を迫る決議案を立法院に提案し、民進党とともに通過させた。正式な党名「中国国民党」から「中国」を削る議論が党内で起きるなど、中国を刺激するような行動が続く。

 中国政府で台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室の報道官、朱鳳蓮氏は10月、国民党の動きを「台湾は中国の一部で(党名変更など)重大な案件を議論の俎上(そじょう)に上げることは許されない」と批判した。「台湾で責任ある政党(国民党)は目を覚まさないといけない」と牽制(けんせい)した。

 中国政府は16年に蔡政権が誕生して以後、当局間の対話窓口を閉ざし、米中対立の激化で台湾への軍事圧力を強めてもいる。台湾では中国による武力行使への懸念から、国民党の対話パイプを使った緊張緩和に期待する声もあるが、党の幹部や立法委員(国会議員)は「現在は国民党上層部に、中国との対話パイプはない状態だ」と危機感を強める。

 国民党の課題は「中国との距離」に限らない。

トイレの紙まで撤去

 台湾の憲法裁判所に当たる大法…

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