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 奈良・東大寺の知られざる魅力を知る「東大寺“細”発見2020」(東大寺、大仏奉賛会、朝日新聞社主催)が始まった。これまで境内を巡るツアーを開催してきたが、今年は新型コロナウイルスの感染予防に配慮して動画で散策を体験する。今回のツアーは南大門をスタート。東大寺教学執事の上司永照(かみつかさえいしょう)さんの案内で、平安時代に焼失した西塔(さいとう)跡や講堂跡などを巡る。観光客が普段あまり訪れない見どころをわかりやすく紹介する。(渡辺元史)

「東大寺“細”発見2020」の動画については、記事後半で詳しく紹介しています。

南大門

拡大する写真・図版東大寺の南大門=2020年10月23日、奈良市、槌谷綾二撮影

 現在の南大門は、重源(ちょうげん)上人(しょうにん)(1121~1206)が再建したとされる。入宋経験がある重源は、大陸の建築様式だった大仏様(だいぶつよう)を採り入れた。高さ約21メートルの18本の柱がまっすぐに立つ。上司さんは「屋根裏の組み木がジャングルジムのように交わっている様子も、真下から見ることができます」と話す。

 門に掲げられている「大華厳寺」の扁額(へんがく)は平成になってからかけられた。文字は聖武天皇の直筆の文字を探し、拡大して再現したという。「平城京の東にある寺ということで今は東大寺というが、華厳宗の寺ということで大華厳寺とも呼ばれています」と上司さん。

 門には、800年間立ち続けている仁王像がある。2体はそれぞれ約3千もの部材で造られた寄せ木造り。2体の背中に懸木(かけぎ)がついており、南大門とつながっている。ただ、南大門に支えられているわけではなく、1988~93年に2体の解体修理を実施した際、中心の根幹材だけでも立つことが確認された。

拡大する写真・図版巨大な柱が天井まで伸び、ジャングルジムのような組み木が見られる南大門=2020年10月23日、奈良市、槌谷綾二撮影

西塔跡

 東大寺の西塔は奈良時代に建立された七重塔で、高さ約100メートルとも考えられている。平安時代中期の934年に落雷で焼失。再建途中の1000年に再び火災に遭い、以降は再建されなかったという。

拡大する写真・図版西塔があったとされる基壇跡。丘のようにも見える=2020年10月23日、奈良市、槌谷綾二撮影

 現在も境内西側の西塔跡には基壇跡が残り、周辺よりも小高くなっている。周囲に木が生い茂り、大仏殿や南大門周辺と比べて人通りはまばらだ。基壇跡は、1964年の橿原考古学研究所による発掘調査で約24メートル四方と判明した。上司さんは「ここに立って天平の昔にあった七重塔を想像してほしい」と目を細めた。

拡大する写真・図版奥に大仏殿を望む講堂跡=2020年10月23日、奈良市、槌谷綾二撮影

講堂跡

 大仏殿の北側にあるのが講堂跡だ。直径約1メートルの柱の礎石が一帯に残る。奈良時代の創建時から室町時代に至るまで3度焼失し、その後は再建されることはなかった。当時は僧侶が仏教研究や講義を行っていたとされる。

 創建当時の大仏殿は柱が12本11間で、江戸時代に再建された現在のものよりも大きかった。講堂は礎石の数などから、創建時の大仏殿並みの巨大な建物だったとみられる。

拡大する写真・図版1メートルを超える大きな礎石がいくつも並んでいる講堂跡=2020年10月23日、奈良市、槌谷綾二撮影

 奈良時代から平安時代にかけて、東室(ひがしむろ)、北室(きたむろ)、西室(にしむろ)の三面僧房(さんめんそうぼう)が講堂をコの字状に取り囲むようにあり、大勢の僧侶が生活をしていたとされる。上司さんは「僧房には、ものすごくたくさんのお坊さんがいたんですね。どういう生活をされてたんでしょうね。ここに来て想像してみて下さい」。付近を流れる小川では、僧房を支えた礎石が見えることもあり、現在は礎石が流されてしまわないよう土塁を積んで守っているが、こうした文化財の保存のあり方も問われているという。

 講堂跡の東側には、江戸時代に大仏殿を再建した公慶(こうけい)上人(しょうにん)(1648~1705)が、塔頭(たっちゅう)と大仏殿の往復に使った細道「公慶道」が残る。突き当たりには大仏殿の再建に使う材木を浮かべていた長池が残る。公慶道から大仏殿の東回廊にかけて、公慶が将来の用材としてスギやヒノキを植えたと伝わる。

拡大する写真・図版奥に伸びる公慶道=2020年10月23日、奈良市、槌谷綾二撮影

拡大する写真・図版江戸時代、大仏殿の再建に使われた木材を浮かべていたとされる長池=2020年10月23日、奈良市、槌谷綾二撮影

拡大する写真・図版大仏殿の屋根を望む二月堂から見た景色=2020年10月23日、奈良市、槌谷綾二撮影

二月堂

 752年に始まったとされる修二会(しゅにえ)で使われる二月堂。修二会が行われる旧暦2月からその名がついたという。1180年の南都焼き打ちなどの戦火から逃れたものの、1667年に失火で焼失。2年後に再建されたと伝わる。

拡大する写真・図版二月堂から見た東大寺の境内=2020年10月23日、奈良市、槌谷綾二撮影

 近くに修二会期間中に練行衆(れんぎょうしゅう)(こもりの僧)が寝泊まりする参籠所(さんろうしょ)がある。かつて本行の上七日(じょうしちにち)と下七日(げしちにち)で練行衆が約20人ずつに分かれていたが、徐々に人数が減り、今は11人になった。

拡大する写真・図版二月堂に上がる登廊(のぼりろう)。右奥に見えるのが二月堂=2020年10月23日、奈良市、槌谷綾二撮影

 二月堂につく湯屋の入り口前には丸い敷石がある。理由はわからないが、練行衆は湯屋に入るときに絶対に踏んではならないという。上司さんは、修二会の際には「練行衆の湯屋への入り方にも注目してほしい」と話す。

拡大する写真・図版練行衆が踏まないという石段の下に写る丸い石=2020年10月23日、奈良市、槌谷綾二撮影

動画の視聴方法

 「東大寺“細”発見2020」の動画を配信しています。上司永照・教学執事が案内する南大門や西塔跡、二月堂などを10月下旬に撮影。紙面で紹介した以外のスポットも含め前編(約48分)・後編(約44分)に分けて配信中です。

 申し込みはhttp://t.asahi.com/wj1p別ウインドウで開きますまたは「朝日ID」のホームページの「イベント一覧」から。前・後編各1100円(税込み)。視聴は2021年3月31日までで、会員登録が必要。期間中、何度でも視聴できます。問い合わせは朝日新聞社・寺社文化財みらいセンター(jisha@asahi.comメールする)。

 大仏奉賛会の会員は無料。申し込み方法など詳細は同会(0742・22・5511=平日午前10時~午後4時)。

■大仏奉賛(ほうさん)会

 大仏奉賛会は、1952年に発足した東大寺の「サポーター」組織です。会員は講演会やイベントに優先的に参加できます。年会費は1口(1万円)以上。

 主な特典は、大仏殿や法華堂、戒壇堂、東大寺ミュージアムの拝観・入館が無料(同伴者2人まで)▽東大寺の行事や年表が入った「東大寺手帳」(非売品)や絵馬、東大寺写経セットを進呈(写経した華厳(けごん)唯心偈(ゆいしんげ)または般若心経(はんにゃしんぎょう)を大仏の胎内に納め、所願成就を祈念)▽聖武天皇祭(茶席券付き)などへの招待▽秘仏公開などの案内など。