後藤一也、三上元
拡大するアルコール依存症に悩む男性は新型コロナウイルスの流行で自宅待機が続く
朝起きると、すぐに缶ビールを「プシュッ」とあける。毎日10本。無くなると、コンビニに行き、ごっそりと酒を買う。
空港で働く50代の男性は4月以降、新型コロナウイルスの影響で自宅待機となり、一気に酒量が増えた。各国が渡航制限をしているため、飛行機が飛ばない。この半年間で出勤したのは、わずか1日だ。
10代でサーフィンを始めた。「風邪をひいても飲んでいた」と言うほど酒が好きで、とくに海から上がった後の一杯は格別だった。毎日缶ビール3本は空けていたが、酒による失敗はとくになかった。
2014年、前に勤めていた仕事先で、人間関係や仕事量の悩みからうつ病となった。朝起きたらまず、缶ビールをあけるところから1日が始まった。ビールと焼酎を少しずつ一日中飲み続け、つまみを適当に食べる。
血液検査の結果、肝機能を示すγ(ガンマ)GTPが1000を超えた。一般男性の基準値は50以下。医師から「アルコール依存症」と指摘され、入院か断酒を迫られたが、断酒を選んだ。
開業したばかりのアルコール依存症専門の心療内科「さくらの木クリニック秋葉原」を紹介された。倉持穣(じょう)院長に「入院したら?」と言われても、「嫌だ」と、15年の正月から通院による断酒を始めた。
日中はクリニックに通い、同じ依存症の患者20~30人とアルコールについての経験や考えを話し合う。家にも酒を置かなかった。
ちょうど1年が経った翌年の正月。ふとあることを思いついたのが間違いだった。
「いま飲んだらどうなるんだろう」
缶ビールをあけた。「あー。別になんてことないな」。コントロールできるうちは大丈夫と、それから毎日、缶ビール1本を倉持さんに内緒で飲み続けた。今の仕事に転職した後も、缶ビール1本で毎日過ごし、通院をやめた。
一度体調を崩し、通院しながら再び断酒することにした。でも、だんだんと断酒や仕事によるストレスがたまっていった。
3年前のある日、突然記憶がなくなる出来事があった。後から聞くと、コンビニで勝手に酒を飲んでいたらしい。離脱症状によるせん妄の一つだと医師から説明を受けた。
それを機に、月1回の通院を再開した。仕事を順調に続け、良い生活のリズムのまま、2年が経とうとしていた。
そこに、新型コロナがやってき…
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