拡大する写真・図版コロナの起源 科学者たちの足跡

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 亜熱帯特有の深い緑の山々の間に霧が立ちこめる。切り立った崖沿いの道に立つと、眼下には赤土を削りながら蛇行する大きな川が見える。

 人類を新型コロナウイルスを襲った今年、その遺伝子配列と96%一致するとして世界各地の科学者の注目を集めたウイルスが、7年前にこの中国雲南省の山奥で見つかった。

 そのウイルスの名は「RaTG13」。新型コロナウイルスの近縁種が発見されたのは、どんな場所なのか。たどってみることにした。

拡大する写真・図版RaTG13が見つかった廃銅山の周囲は緑の深い山々が連なる=中国雲南省墨江ハニ族自治県、平井良和撮影

 まず訪ねたのは、省都の昆明市から300キロ南下したところにある「通関」という町だ。北回帰線を越えたすぐ先にあり、古くから茶を栽培している少数民族ハニ族が暮らす墨江ハニ族自治県に位置する。香辛料や野菜などを売る市場があり、街道沿いに雑貨店や鶏1匹を丸ごと煮込む鍋料理の店が並ぶ小さな町だ。

 町の名前「通関」は中国語で「トングアン」と読む。その英語表記の頭文字をあわせれば「TG」。RaTG13が発見された地域を示す「TG」だ。「Ra」はコウモリの一種、「13」は2013年に採取されたことを表している。

 このウイルスを見つけたのは、中国湖北省武漢にある中国科学院武漢ウイルス研究所のチーム。今年2月、英科学誌ネイチャーで新型コロナウイルスと「96%一致した」との研究結果を発表した。02~03年に中国を襲ったSARS(重症急性呼吸器症候群)の起源をたどる研究で中国各地を回る中で、採取したウイルスの一つだったという。

拡大する写真・図版通関の民家と住民=中国雲南省墨江ハニ族自治県、平井良和撮影

閉鎖された銅山 住民は口を閉ざした

 チームの論文によると、RaTG13が発見されたのは銅山だった。通関の住民に聞きこむと、確かに町から山一つ隔てた先にかつて銅山があったという。その方向へ車を走らせること1時間。激しく蛇行する道は車がやっと通れるほどにまで細くなり、断崖を縫うようになった。途中、土砂崩れの跡や群れて歩く水牛にも出くわし、それらを慎重に避けながら進んだ。

 道端で豆を干す女性を見つけて銅山の場所を尋ねると「十キロ以上先にあったがもう閉鎖された。詳しく知らないが、人が亡くなったと聞いた」とは答えたが、多くは語らなかった。

 銅山に近づくほど、点在する集落に住む人たちの口は重くなっていった。

 「あの山は危…

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