[PR]

 75歳以上の医療費の窓口負担の見直しをめぐって政府と公明党の交渉が難航する中、菅義偉首相と公明党の山口那津男代表が9日夜会談し、歩み寄ることで一致した。一方、政府・与党の協議では、同じく政府と公明の意見が食い違う児童手当の縮小問題も取り上げられ、並行して議論が進んでいる。

 首相と山口代表は都内で1時間あまり会談した。公明幹部は「先送りするわけにもいかず、お互いが尊重しあう方向で大枠の認識を共有した」として、早期決着へ歩み寄りをみせたことを明らかにした。

 75歳以上の医療費窓口負担を2割に引き上げる所得基準を巡っては、単身世帯の年金収入で「170万円以上(対象人数約520万人)」を主張する政府と、「240万円以上(同約200万人)」を求める公明が対立してきた。

 首相は幅広い層の高齢者に2割負担を求めることで、現役世代の負担を軽減することに強い思い入れがあるとされる。首相周辺は「後期高齢者の負担増はどうでもいいというわけではなく、現役世代の負担とのバランスで選んだ」と明かす。9日昼に首相と面会したジャーナリストの後藤謙次氏によると、首相は「全く譲る気はない」と強調したという。

 これに対し、公明はコロナ禍での負担増の議論が次期衆院選や来夏の東京都議選に影響することを懸念し、当初は議論の「先送り」を提案。その後示した対象者を絞った案は「最大限の譲歩」(山口代表)と位置づけていた。

 一方で、政府は9日の協議で児童手当の縮小をめぐる案を示した。医療費負担と並ぶ難題だが、並行して協議する方針だ。

 「待機児童ゼロ」を安倍政権から引き継いだ菅政権は、2024年度末までに新たに約14万人分の保育の受け皿を整備する費用を確保する必要があり、政府は児童手当の縮小で財源を捻出したい構えだ。

 9日に示されたのは2案。一つは高所得者向けの特例給付(月5千円)に新たに所得制限をつけ、年収1100万円までとする案だ。もう一つは、いまは「働き手の収入が高い方」としている所得要件を「世帯合算」に改め、満額給付するのはいまの年収960万円未満から1200万円未満に引き上げる。1200万~1500万円の世帯は特例給付とし、1500万円以上は支給なしとする案だ。

 公明は歴史的に児童手当の拡充を訴えてきただけに、縮小に強く反対している。これに対し、首相は児童手当に比べると、高齢者医療費の問題への思い入れがより強いとみられる。そこで政府が児童手当で公明に譲歩する代わりに、高齢者医療費では公明に譲ってもらって首相の意向を通す、という「痛み分け」による決着も政府・与党内で取りざたされる。

 ただ、公明党の竹内譲政調会長は「児童手当と取引するようなことは、世間からお叱りを受ける」と述べており、隔たりは大きい。(浜田知宏、西村圭史、太田成美)