「日本のルール知って」 大阪府警がベトナム語パンフ

古田寛也
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 大阪府内で暮らすベトナム人向けに、ベトナム語で日本の交通ルールを説明したパンフレットを府警が初めてつくった。各署や堺市のベトナム総領事館で配布している。近年の在留人口の急増で事故も増加傾向にあり、府警は「事故防止に役立てて」と呼びかけている。

 パンフレットはA4判見開きで全4ページ。警察110番、救急119番といった緊急時の連絡先や、信号の色、点滅の意味などをイラスト付きで詳しく説明している。

 特に重点を置いているのは自転車利用のルールや注意点だ。ベトナムではかつて自転車が盛んに使われ、府警交通総務課によると、多くの在日ベトナム人が自転車に乗っているという。

 このためパンフレットでは、自転車は車道走行が原則で「歩道が例外」であると強調している。「自転車でぶつかっても交通事故です!」として、多額の損害賠償が生じた過去の事故の例も賠償額とともに示し、注意を呼びかけている。

 府警交通総務課の担当者は「府内では自転車の保険加入が義務づけられていることや、二人乗り、携帯電話を使いながらの運転が違反だということも伝え、事故を防止したい」とする。

 ベトナム人の技能実習生や日本語学校への留学生はここ数年急増している。府によると、2009年に約3200人だった府内の在留ベトナム人は19年で約3万4千人と10倍以上になった。国籍別では韓国、中国に次いで3番目に多い。

 府警によると、ベトナム人が関係する交通事故件数は15年は16件だったのが、19年は46件だった。

 交通ルールのパンフレットは府がつくった英語、韓国語、中国語の各版があったが、企業や学校などの要望を受け、府警が独自にベトナム語版5千部をつくった。ほかの3カ国語版はカラーだが、「予算を抑えるため」(府警幹部)、ベトナム語版は白黒だ。

 府警はこれまで企業や日本語学校で外国人向け交通安全教室を開いてきた。昨年の受講者は約1万2千人。ただ、新型コロナウイルスの影響で現在は教室を開けなくなっており、府警は「パンフレットを活用してほしい」とする。

 5年前に留学生として来日し、今はベトナム語などを教えるファム・チャン・キン・ゴックさん(25)は、「日本はベトナムより自転車も多く、標識などルールも違いがたくさんある。パンフレットを企業や学校で配れば読まれると思う」と話した。

 日本とベトナムの交流活動をしているNPO法人日越関西友好協会の古賀功一事務局長によると、民間企業では顧客向けの書類をベトナム語に翻訳するところが増えてきているが、行政の対応は遅れ気味だという。古賀さんは「ベトナムでは車も左ハンドルだし、日本のような交差点も少ない。こういったパンフレットはとても意義がある」と話す。(古田寛也)

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