「原子力ムラに引きずられ…」 パニック恐れ招いた不信

有料記事

福井万穂 渡辺松雄 関根慎一 編集委員・大月規義
[PR]

 福島第一原発事故の避難で自治体が騒然としていたころ、原発は制御不能に陥り、政府も避難にかかわる情報の出し方をめぐり混乱していた。

 1号機の建屋が爆発した3月12日、周辺で放射性物質が観測され始めた。

 炉心の溶融(メルトダウン)が起きているのではないか。原子力安全・保安院の中村幸一郎審議官は記者会見でそう問われ、「溶け出していると見ていい」と発言。その直後に広報担当から外された。

 「メルトダウンという言葉は政府や東京電力のあいだで禁句になった」と当時の保安院幹部は話す。

 菅直人首相は、原子力委員会の委員長だった近藤駿介氏に、第一原発の「最悪の場合のシナリオ」をつくらせた。

 それによると、建屋だけでなく原子炉も爆発してしまうと、作業員が近づけなくなり、燃料を冷やすことができなくなる。

 放射能による汚染で50キロ圏は速やかな避難が必要となる。住民の移転を国が想定する地域は250キロ圏より外まで広がりかねない。そんな「不測事態シナリオの素描」が25日、官邸に提出された。

首相補佐官「把握していた情報との落差に仰天」

 翌26日、首相補佐官に急き…

この記事は有料記事です。残り1849文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません