大山稜
拡大するNPO法人「TENOHASI」の炊き出しに並ぶ人たちの列=2020年11月28日午後4時56分、東京都豊島区東池袋3丁目、大山稜撮影
繁華街がイルミネーションで彩られるようになった11月下旬の夕方。暗やみに包まれた東京・池袋の公園で、路上生活者らを支援するNPO法人「TENOHASI」のスタッフがほのかなライトを頼りに弁当を配る準備を始めた。冷たい風が吹きすさび、気温が一けたまで下がる。思わず身を縮めるほどの寒さでも、弁当を配り始める頃には、1メートル間隔で並んだ列が幾重にも折り重なっていた。
白いごはんにコロッケと焼き鳥。「久々の、ちゃんとした食事です」。初めて訪れたという黒いパーカ姿の男性(38)が、弁当を手に話してくれた。財布に入っている金は千円に満たないという。「コロナのせいです。ぱったり、仕事がなくなりましたから」
拡大する炊き出しに集まった人に弁当を配る支援団体のスタッフ(左)=2020年11月28日午後6時22分、東京都豊島区東池袋3丁目、大山稜撮影
5年前に住み込みの新聞配達のアルバイトをやめ、派遣会社に登録。週に5日、主に物流会社の倉庫で商品整理の仕事をしながら、新宿や池袋のネットカフェを転々としてきた。認知症を抱える母親しか「緊急連絡先」に登録できる人がいないため、アパートは契約できないでいたが、仕事は途切れず、月収は20万円を超えることもあった。
しかし、新型コロナの感染拡大の「第1波」に見舞われた今春、仕事が急に減り始めた。多くても週2日ほど。15万円ほどあった貯金を取り崩しながら暮らしていたが、「第2波」がやってきた夏にはほぼ底を突いていた。
たまに入る仕事の収入でしのいでいたところに、これまでを大きく上回る「第3波」が襲ってきた。派遣会社に勤務希望のメールを何度送っても、「今はない」と即答される。感染防止のため、派遣先の現場では人手を絞っていると聞いた。
拡大する炊き出し会場でもらった弁当を手にする男性=2020年11月28日午後7時23分、東京都豊島区、大山稜撮影
半日2千円ほどのネットカフェの料金が払えず、外で過ごす日が増えた。新宿駅の地下通路の端っこで、じっと座り込む。シャッターが閉じれば、震える体をさすりながら街中を歩き続けた。新宿周辺の公園のベンチで、ひたすら寒さをこらえる。通行人や警察官から不審な目を向けられないよう、道で拾った文庫本を開き、読むふりをした。「寝てる間にバッグが盗まれたら」と2、3日、眠らないこともあった。
「俺、明日はどうなってるんだろう……」。そんなことを考えながら、日が昇るまでの時間をやり過ごす。「地獄でした。このまま真冬を迎えれば、体がもたなかった」
12月上旬、「TENOHAS…
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朝日新聞社会部