名和前総長が北大・国を提訴 解任取り消しと賠償求め
北海道大学・前総長の名和豊春氏(66)が部下を過度に叱るなど不適切な行為を繰り返したとして総長を解任された問題で、名和氏が北大と国に対し、解任の取り消しと約1460万円の損害賠償を求める訴訟を10日、札幌地裁に起こした。名和氏は一連の問題について初めて記者会見し、「裁判の場で解任の真相を明らかにし、名誉を回復したい」と訴えた。
◇
北大の総長選考会議は昨年7月、総長の適格性を欠くとして文部科学相に名和氏の解任を申し出た。威圧的な言動など28件の不適切な行為が確認されたとして、文科相が今年6月に名和氏を解任した。2004年度の国立大学法人化後、学長解任は初めてだった。
訴状などによると、名和氏は28件の行為について「事実誤認や評価に誤りがある」と否定。同会議が設けた調査委員会が名和氏への聞き取りをしていないなど、解任申し出の手続きは違法だったと訴えている。
学内のハラスメント相談の受け付け情報が開示されなかったとして、北大に不開示処分の取り消しを求める訴訟も同時に起こした。
北大と文科省は「訴状が届いておらず、コメントは差し控える」としている。
◇
名和氏は札幌市内で記者会見を開き、「調査委員会の調査は私に一切の弁明の機会を与えず、提出された証拠の閲覧まで制限された。事実認定や手続きは不当で基本的な人権を侵害するものだ」と訴えた。
「理由も経緯も(学生や教職員ら)大学の構成員に明らかにされないまま、解任ありきで進められた。大学の自治を踏みにじる行為だ」「一個人の問題を超え、北大や他大学にとっても大きな問題だ」と批判。不適切と認定された行為については「選考会議はパワハラとは認定していない」とし、「経理的な不正などで叱責(しっせき)したことはあるが、不適切な行為に相当するものではない」と主張した。
解任が取り消された場合に復職するかを問われ、「真相を解明する必要があり、裁判の結論が出ないとわからない」と述べた。(川村さくら、磯部征紀)
北海道大学総長解任をめぐる経緯
<2016年12月> 人件費削減幅の圧縮を訴えた名和氏が、総長選考をめぐる教職員の投票で現職を破る
<17年4月> 名和氏が総長に就任。任期は23年3月まで
<18年10月> 教職員から名和氏の非違行為に関する通報があったと大学の顧問弁護士が理事に報告
<11月> 総長選考会議が調査委員会を設置
<12月> 名和氏が体調不良を理由に休職
<19年7月> 総長選考会議が名和氏の不適切行為を認定、文科省に解任を申し出る
<20年3月> 文科省が名和氏を聴聞
<6月> 文科省が30日付の総長解任を決定し、名和氏に通知
<7月> 北大が名和氏の解任について記者会見
<9月> 北大が総長選考会議を開き、名和氏の後任に宝金(ほうきん)清博氏を選出
<10月> 宝金氏が総長に就任
<12月> 名和氏が北大と国を相手に提訴
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。