パナソニックは来年6月に津賀一宏氏が社長職を退き、後任に楠見雄規(くすみゆうき)・常務執行役員が就く。2022年4月には持ち株会社に移行する。9年にわたり巨大企業を率いてきた津賀氏に、その目的や会社の将来像を聞いた。
つが・かずひろ 1956年生まれ。1979年に松下電器(現パナソニック)に入り、主に研究開発畑を歩んだ。2012年6月に創業者の松下幸之助を除いて同社最年少の55歳で社長に就任。プラズマテレビをはじめとする赤字事業からの撤退を進める一方、テスラとの協業など家電以外の事業の育成に取り組んだ。東京五輪・パラリンピック組織委員会の副会長。趣味はドライブとゴルフ。
「優しい人」でも改革しやすく
――なぜ、会社の形を大きく変えるのでしょうか。
「いまの形では、全体がじり貧で沈んでいく。これを脱する必要がある。過去の松下電工や三洋電機の買収で、事業部門が増えた。社長就任後に整理し、それぞれの部門が(何をしているのか)よく見えるようになった。一方で、自分の部門が苦戦していても、ほかでカバーしてくれるという意識が出てきてしまった」
――持ち株会社化で体質は変わりますか。
「事業ごとに会社を分けることで、それぞれが競争力を高め、自分たちの将来を自分たちで決められる形にした。誰もが会社を引っ張るというマインドに変わってくる。ブランドの利用やITインフラの整備といったグループ全体に関わるものは、(司令塔の)持ち株会社を通じて、大きな会社のよさを生かす」
――新社長には何を期待しますか。
「私がしてきたことと大きくは変わらない。持ち株会社化で経営はやりやすくなるはずだ。(事業構成の入れ替えがしやすい)冷徹な仕組みにした。私はよく冷徹さに欠けるといわれたので、優しい人でも(改革を)できるようにした」
――電池を納める電気自動車(EV)最大手の米テスラとの関係はどうしますか。
新社長選任の理由について「今は『戦時』だから、合理的なタイプがいい。手遅れにならないうちに冷徹な判断をする方が。」と社外取締役の冨山和彦氏が語ります。記事後半で詳しくご紹介します。
「昔は小さな、いつつぶれる…