拡大する写真・図版薬物の危険性について講義をした警視庁の宮内奈穂警部補(右)とリモートで視聴した学生(画面)=2020年11月11日、東京都世田谷区の国士舘大、角詠之撮影

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 「ゲートウェードラッグ(入門薬物)」とされる大麻が若者の間で広がっている。覚醒剤などほかの薬物と比べ、抵抗感が薄く、SNSや知人を通じて容易に入手できることが要因とみられている。コロナ禍でも薬物汚染を食い止めるための注意喚起の場を失わないよう、警視庁では大学生らに「リモート講義」を始めている。

 国士舘大(東京都世田谷区)で11月、リモート講義があった。サッカー部や野球部などのスポーツ部を中心に約210人が受講。講堂にいたのは約20人で、ほかは東京都町田市の学生寮からネット回線を使って視聴した。新型コロナウイルスの感染拡大対策の一環だ。

拡大する写真・図版薬物の危険性について講義をする警視庁の宮内奈穂警部補。コロナ対策で設置したパネル越しに学生らに意見をたずねた=2020年11月11日、東京都世田谷区の国士舘大、角詠之撮影

薬物は「大切な人を不幸にする」

 講師の宮内奈穂警部補は大麻について「有害で危険。決して安全ではない」と指摘。覚醒剤使用などへの「入り口」になっている実態を説明した。約10年の薬物捜査の経験から、実際の事件を紹介して「大切な人を不幸にする。誘われてもNOと言える意思と勇気を持って」と訴えた。

 受講したサッカー部の細井弘貴さん(2年)は「知らないことが多かった。絶対に使ってはいけないと改めて感じた」と話した。

拡大する写真・図版押収された大麻草=2020年9月、愛知県警千種署

 警視庁ではこれまで大学や企業で多くの人を集めて講義してきたが、コロナ禍で注意喚起の場が急激に減っているという。大学の広報担当者は「今年は学生に注意を促す機会がなかった。リモートが選択できたのはありがたかった」と話した。

 警視庁は講義について、「オンラインで積極的に取り組んでいく。ぜひ活用してほしい」としている。問い合わせは組織犯罪対策5課(03・3581・4321)へ。

大学生の大麻事件相次ぐ

 警察庁によると、大麻に絡む事件で警察が今年上半期(1~6月)に逮捕・書類送検したのは2261人に上り、同時期では過去最多を記録。数字を押し上げているのが20代以下の若者だ。20歳未満は前年同期の約1・5倍の428人、20代は約1・2倍の1129人だった。大学生は前年同期から56人増の116人、高校生は36人増の87人、中学生は前年同期と同じ4人だった。

拡大する写真・図版大麻事件の摘発者(警察庁まとめ。2020年は1~6月)

 一方、薬物に絡む事件の摘発者のうち、種類別では全体の6割を占める覚醒剤。減少傾向にあるものの、今年上半期の20代以下の摘発者は498人に上った。大学生は4人、高校生は7人だった。

 今年は大学生の大麻事件が相次いだ。日大ラグビー部では1月、部員が大麻の所持容疑で逮捕され、近畿大サッカー部と東海大野球部では10月、複数の部員の大麻使用の疑いが浮上した。部活生でない学生の逮捕も各地で後を絶たない。

拡大する写真・図版東京税関が押収した乾燥大麻=2018年9月、東京都大田区

脳に深刻な影響

 大麻には依存症があり、若者らの脳に深刻な影響を与え、精神的症状の発現リスクを高める。だが、危険性を認識しないまま大麻に興味本位で手を出してしまうケースが多いという。

 警察庁が19年10~11月に摘発された631人を対象に調査したところ、大麻を初めて使った年齢は「20歳未満」がほぼ半数を占め、うち約6割が動機に「好奇心・興味本位」を挙げた。危険性の認識については、約8割が「まったくない」「あまりない」と答え、危険性を軽視する理由としては「大麻が合法な国がある」「依存症はない(弱い)」が多かった。

拡大する写真・図版薬物の危険性を伝える警察官による講義。講堂の学生に加え、学生寮の学生もリモートで参加した=2020年11月11日、東京都世田谷区の国士舘大、角詠之撮影

講義の問い合わせはこちら

 警視庁は講義について、「オンラインで積極的に取り組んでいく。ぜひ活用してほしい」としている。問い合わせは組織犯罪対策5課(03・3581・4321)へ。(角詠之、田内康介)