小松政夫さんの爪のない足指 記者に見せた笑いへの執念
7日に78歳で亡くなったコメディアンの小松政夫さんは2018年に連載「人生の贈りもの」に登場しました。そのときの思い出を取材記者が振り返ります。
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小松さんをインタビューしたのは、ちょうど3年前の今の時期。毎回ご自宅がある私鉄沿線の駅前のケーキ屋で待ち合わせた。師走の慌ただしいなかでの取材依頼だったが、小松さんはいつも先に到着し、店舗奥の喫茶スペースに座っていた。きれいに整えた白髪に上品なウールジャケット。まるで英国紳士のようなたたずまい。私の質問にも、どちらかというと少し低めの声で、言葉を選びながら、とつとつと答える感じだった。
博多で過ごした裕福な幼少期の思い出、青年になってから横浜に出てきて自動車会社のトップセールスマンになったこと、付き人で父親代わりでもあった故植木等さんとの縁……。
これが、あの小松政夫?
私は話を聞きながら、実は何度もそう思った。
というのも私の小学生時代、キンキラ衣装をまとって甲高い声で叫びまくり、テレビの前の子どもたちを熱狂させた「破天荒なコメディアン」の面影はみじんも感じられなかったからだ。伊東四朗さんとコンビを組んだ人気絶頂期、実は2人とも綿密に準備を重ねた上で臨んでいた、と明かした。
ある日、予定したインタビューが終わらないままケーキ屋の閉店が近づいた。「もう少し話した方がいいですよね?」。そう言いながら近くの居酒屋へ誘ってくれたのは小松さんだった。行きつけの店の壁には「淀川長治」に扮した小松さんのポスターが張られていて、店員や常連客らが笑顔で迎えた。
座敷席に通されて、私が入り口で靴を脱いでいると「ちょっと汚いけど見ます?」。小松さんが、おもむろに靴下を脱ぎ始めた。
私の目に映ったのは、両方の…