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TPPの元交渉担当者に聞く(上)

 米国のトランプ政権が離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)に対して、中国は習近平(シーチンピン)・国家主席自らが参加検討を表明し、地域の経済秩序をゆさぶる。日本と中国が共存するメガFTA(自由貿易協定)である地域的包括的経済連携(RCEP)の合意後、日本が取り組むべき次の一手は――。日本で初めてのFTA交渉をシンガポールとの間で立ち上げ、TPPの参加や交渉にも深くかかわった前特許庁長官、宗像直子・第一生命経済研究所顧問にきいた。

拡大する写真・図版宗像直子氏。経済産業省時代、シンガポールとの間で日本初のFTAの立ち上げやTPPへの参加、交渉にかかわった(本人提供)

むなかた・なおこ 第一生命経済研究所顧問。前特許庁長官。1984年通商産業省(現経済産業省)に入り、通商機構部長、貿易経済協力局長などを経て安倍晋三首相秘書官などを歴任。東京大学法学部卒、ハーバード・ビジネス・スクールMBA取得。

――11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、中国の習国家主席はTPPへの加盟を検討していると述べました。本気でしょうか。

 「米国不在のタイミングを狙った、戦略的ポーズではないか。(大統領選で)僅差(きんさ)で勝ち、様々な懸案を抱えるバイデン次期政権にとって、TPP復帰の優先順位は高くないだろう。中国にとって、仕掛けるだけならコストはかからない」

 「TPPには、国有企業の扱い、補助金の規律、デジタルルールなど、中国の政治体制や産業政策と相いれないルールが含まれる。習政権は、産業競争力の強化を急ぎ、経済への関与を強めている。国家が競争条件をゆがめないように求めるTPPへの参加が両立できるとは思えない」

拡大する写真・図版中国の習近平国家主席=新華社

――TPPの水準については、米国が抜けているから凍結されているものも多く、それほど高くない、という見方があります。たとえば、最も難しい国有企業のルールも、マレーシアやシンガポール、共産党一党独裁のベトナムができているのだから中国もできないことはない、と。

 「中国が実際にTPPへの参加を目指すとすれば、中国が約束する内容が自国の制度や政策を維持できるようにすることを求めると予想する。形の上ではルールを受け入れたこととしつつ、大幅な例外を確保することで、実質的に影響がないようにする、ということだろう。中国の産業政策が世界の経済秩序に与えているインパクトを考えると、ベトナム、マレーシア、シンガポールと同列に論じることはできない」

 「世界は中国がその規模と力に見合った『責任あるステークホルダー』となることを期待した。世界貿易機関(WTO)加盟では、それを促すことはできなかった。TPPに中国をどのような形で迎え入れるかは、世界経済の大問題だ。中国を動かすテコになるのは加盟を受け入れるまでの間だ。トランプ政権下でTPPを離脱してしまった米国も、有志国によるハイレベルの枠組みを構想した原点に立ち返って、議論に参画すべきだ」

――日本政府は1990年代末、WTOの加盟を、米国に先んじて認めました。当時と状況はずいぶん変わりましたね。

 「中国のWTO加盟を受け入れ…

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