[PR]

 今年1月、イランの革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官らがイラク国内で米軍に殺害された事件をめぐり、「イラク政府が事前に暗殺計画を知っていたのではないか」という疑惑が出ている。イラク国内の政治対立や、イランとイラクの関係をめぐる思惑も影響しているとみられる。

 事件は1月3日未明に発生した。バグダッド国際空港の近くで米軍の無人機(ドローン)が攻撃を行い、ソレイマニ司令官やイラクの親イラン系武装組織のムハンディス副司令官らが殺害された。

 2018年までイラク首相を務めたアバディ氏は12月10日に収録されたテレビインタビューで、「イラク政府はソレイマニ司令官らをターゲットにした米軍機がイラク空域を通過する許可を与えた。許可を与えた者を共犯者だと非難するつもりはないが」と証言した。地元紙によると、イラク空域ではドローンであってもイラク軍や駐留米軍による事前の通過許可が必要で、イラク首相にも報告される仕組みだという。

 この証言を受け、事件当時に暫定政権を率いていたアブドルマハディ前首相側は事件前後の動きを時系列で説明する文書を発表し、「(暗殺への)いかなる許可も与えていない」と主張。親イラン系武装組織が母体となっているイラク第2の政党「ファタハ連合」の幹部は地元紙の取材に「米軍機への空域通過許可は与えられていたが、暗殺に許可を与えたわけではない」と述べ、司法当局がアバディ氏を調査するよう求めた。

 イラクは米軍が駐留を続ける一方、シーア派の国民が多く、イランとの関係が近くなっている。アバディ氏は米国寄りの政治姿勢で知られ、ソレイマニ司令官らの殺害について米国とイラクの事前合意をほのめかすことでイランを揺さぶり、イラク―イラン関係を悪化させる思惑もあるとみられる。(ドバイ=伊藤喜之)