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 今年、還暦を迎えた作家の佐藤優さん(60)は、50代からは残り時間を逆算し、安易に新しいことには挑戦しない「消極主義」を主張する。人生100年時代。国は「いくつになっても新しいことにチャレンジできる社会を」と、一億総活躍を掲げてきたが、なぜ積極的に動いてはいけないのか。今年、50歳になった記者が聞いた。

新規プロジェクトは片道切符?

 ――後半人生を豊かなものにするためにも、様々なことにチャレンジすべきだと思っていたのですが……。

 「50代以降や定年後の生活に向けたメッセージの多くは、『まだ若いんだ、頑張れ』という方向のものです。でも頑張ると、無駄なところへのエネルギーの投入が過剰にされてしまうんですね。これは非常にまずいと思います。今は、頑張れと言われなくても頑張らざるを得ない。体がきく限り、働き続けなければならない状況だと、みなわかっています。そういう状況の中で、現実に近づくためには消極主義が必要なんです」

 ――具体的にはどういうことですか。

 「たとえば、会社などで、これまで全く関わったことがない分野のプロジェクトを任されそうになったら、うまく逃げることです」

 ――抜擢(ばってき)されて、任されたのではないのですか。

 「自分に合っている分野で、業績も伸びているなら別です。でも全く新しいプロジェクトって、会社も成功すると思っていないんです。うまくいかなかった時の責任を取らせる要員として、送られる可能性もありますからね。組織というのは狡猾(こうかつ)です。生き残った人だけを登用し、後は整理すればいいわけで、討ち死にする消耗品として使われる可能性もある。そういうところに自分が送られて、喜ぶな、ということです」

 ――でも断ったら、もっと条件の悪いところに飛ばされるのでは、と考えてしまうのがサラリーマンの性です。

 「自分の力がある程度あれば、適性から著しく乖離(かいり)したところには行かないでしょう。日本の組織というのはピラミッド構造なので、代表取締役や事務次官など、基本的に1人しか幸せにならないつくりになっています。椅子取りゲームから降りざるを得なくなったときに何が起きるかというと、心理学でいう『合理化』、つまりイソップ物語の『酸っぱいブドウ』です。自分はこの物語のキツネのようになっていると、突き放して見ればいいんです」

 ――人間関係はどう考えればいいですか。

 「選択と集中で、仕事関係の人脈は仕事において役立つか、役立たないかで割り切る。有益な人に絞り込むことです」

 ――非常に身もふたもない言い方ですが……。

 「新聞記者も名刺交換して色々…

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