江戸文化「発酵の里」再生へ 施設に8店、被災地で開業

大久保泰
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 東日本大震災で被災した岩手県陸前高田市の今泉地区に17日、発酵をテーマにした商業施設「CAMOCY(カモシー)」が開業する。被災後に店を再建した醸造会社など8店が出店。江戸時代からしょうゆやみそ蔵が並んだこの地域に、「発酵の里」を再生しようとしている。

 施設には、お弁当や惣菜(そうざい)、岩手沿岸では初となるクラフトビール店など8店舗が入り、フードコートで飲食できる。地元の木材を使った平屋(約715平方メートル)で、外観は杉の板張りと白い仕立てで、蔵をイメージしている。

 施設を運営する「醸(カモシー)」は、地元の7業者が出資して設立された。社長の田村満さん(73)は震災後、地域活性化のため「箱根山テラス」やパン工房など約50の事業を立ち上げてきた。田村さんは「伝統である発酵文化を浸透させ、高田は『発酵の里』ということを全国へ、世界へ広げていきたい」と話す。

 17日は午前11時開店。18日以降は当面、午前9時から午後7時まで。火曜定休。各店が品ぞろえを増やし、来年3月に本格オープンする。

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 発酵食品を使ったおひつ膳(ぜん)などを提供する「発酵食堂やぎさわ」は、地元の醸造会社「八木沢商店」が手がける。津波で本店や蔵などを流失し、釜石市の研究所に残っていた「もろみ」を使って生産を再開した。河野通洋社長(47)は「発酵は微生物。多種多様なものがハーモニーを造る。そういう施設をめざしたい」と話す。

 「ベーカリーマーロ」の店長塚原涼子さん(34)は今回の出店に伴い、陸前高田に移住した。塚原さんが勤めていた千葉県パン屋は陸前高田でチャリティー販売会を開くなど支援活動を続けてきた。「海の幸などこの地の食材を生かしたパンを味わってもらいたい」と塚原さん。

 チョコレート工房を出店するのは気仙地方で薬局や介護業を営む「ロッツ」。大阪府出身の富山泰庸社長(49)は東日本大震災の後、陸前高田にボランティアに入り、多くの薬局が津波でなくなったことを知り自ら開いた。「健康にもいいカカオの魅力を知ってもらい、街の人たちを元気にしていきたい」と意気込んだ。(大久保泰)

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