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 3月に岐阜市内で路上生活をしていた一人の男性(当時81)が襲われて死亡した事件。約1カ月後の4月下旬、いずれも19歳(当時)の少年5人が殺人や傷害致死容疑で岐阜県警に逮捕された。

 亡くなった男性は事件現場付近で約20年間、テントで暮らし、拾い集めた空き缶を売って生計を立てていた。たまに缶コーヒーを楽しみ、「自分には学がないから」と、図書館で読書するのが日課。静かに暮らしていた男性がなぜ死ななければならないのか。取材をしながら「どうして」の思いがつきまとった。

 少年2人が傷害致死罪で起訴され、1人は少年院送致に。残る2人は不起訴処分(嫌疑不十分)となった。当時、岐阜家裁が公表した処分理由で明らかになった犯行動機はあまりにも単純で軽薄だと感じた。

 家裁送致された少年2人の決定要旨には次のように記されている。

 「遊び仲間から誘われ、次第に被害者への投石行為を楽しむようになった」「ホームレスを見下す意識などもあり、遊びとして被害者らへの投石をするようになった」

 「被害者の恐怖や苦痛、投石行為などの危険性に思考を深めることができなかった」

 周辺取材から少しずつ行為がエスカレートしていく様子もわかった。きっと軽い気持ちで始めたのだろうが、結果は限りなく重大だった。周囲の人々に与えた影響も大きかった。

 野球仲間だった少年5人のうち、不起訴となった2人は逮捕時、朝日大学(瑞穂市)の硬式野球部に所属していた。事件を受け、部は活動停止に追い込まれた。ネット上では逮捕された少年たちの個人情報を探る動きが高まり、事件とは全く無関係の野球部員らを「犯人視」する悪質な書き込みもあった。

 野球部の主将(3年)は「同級生から『野球を辞めたい』『普通に就活した方がいいんじゃないか』という声が出た」と振り返る。世間の目を意識する日々。地域の信頼を回復しようと、瑞穂市内の小中学校で校内消毒を手伝うなどのボランティア活動も行った。

 主将は「事件で失った信用を少しでも取り戻すためにも、自分たちのできることからやっていこうと全員で取り組んだ」。9月、部は約5カ月ぶりに活動を再開。主将は「いつかは現場を訪れ、手を合わせたい」と話した。

 起訴された少年2人の裁判員裁判に向けた公判前整理手続きが間もなく始まる。少年たちには「遊びとして」奪った命の重さを自覚し、家族を含めた周囲に与えた影響を直視して欲しい。そして、裁判員裁判で、自らの言葉で事件への思いを語って欲しい。(松山紫乃)