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 新型コロナウイルスの感染拡大は人々の暮らしを大きく変えました。医療従事者、夜の街で働く人たち、インバウンドが消えたゲストハウス、東京五輪、パラリンピックが延期になった選手、厳しい状況の外国人留学生……。色々な立場の人たちを訪ね、コロナ禍に見舞われた「私たち」の2020年を伝えます。

拡大する写真・図版宿泊者は3人だけの土曜日の夜。ゲストが外出の間、オーナーの熊本夫妻は、宿のスタッフの誕生日を手料理で祝った。10人以上が囲めるテーブルは、宿泊者同士が会話やゲームをしたり、時に食事をシェアしたりすることもある交流の場所だ=2020年11月28日午後9時38分、岐阜県高山市、林敏行撮影

 岐阜県高山市のゲストハウス「tau」を営む熊本幸紀さん(44)は、4年近く続けた宿を来春までに事業譲渡することを決めた。「自分たちの手でつくった宿を手放すのは寂しいけど、コロナが背中を押してくれたかな」

 定員18人、1泊約3千円のドミトリー中心の小さな宿だが、城下町の風情が残る地区にほど近く、約7割が外国人客だった。リビングの10人以上が囲めるテーブルでは、客同士の交流が自然と生まれていた。

拡大する写真・図版開業した2017年に訪れたゲストの写真。外国人の宿泊者も多く、リビングでは自然と交流の輪が生まれていた=岐阜県高山市、林敏行撮影

拡大する写真・図版チェックインする常連客に、「GoToトラベル」の電子クーポンの説明をする妻の尚子さん=岐阜県高山市、林敏行撮影

拡大する写真・図版相部屋になるドミトリー。区切られた二段ベッドは、天井の高さが自慢だ=岐阜県高山市、林敏行撮影

 3月中旬、新型コロナウイルス感染拡大で、インバウンド(訪日観光客)が一気に消えた。4月~7月中旬は休業。再開後は、リピーター客が戻ってきた。11月の宿泊客はのべ51人。昨年11月は378人だった。それでも熊本さんは、「けっこういたね。3連休は満員でも、この状況だし」

 様々な人が集うゲストハウスに魅力を感じ、何度も訪れる常連客は多い。広島出身の熊本さんも、そんな一人だった。

 35歳、ゲストハウスに泊まるのは3回目だった倉敷で「俺もやろうと決めた」。39歳で会社を辞め、阿蘇で物件を探したが、熊本地震が発生。ネット上の空き家バンクの広告で偶然見かけた今の物件を下見するため、初めて高山に訪れた。仲間の手を借りて工事をし、1年後の2017年4月に開業した。

拡大する写真・図版館内には和傘が飾られている。外国人の利用客は約7割を占めていた=岐阜県高山市、林敏行撮影

拡大する写真・図版宿の看板猫「ルーク」におやつを与える、ゲストハウス「tau」オーナーの熊本幸紀さん=岐阜県高山市、林敏行撮影

 休業中の5月、隣接する飛驒市で農業のアルバイトを始め、20代に抱いた食への関心が再燃した。「2年前からより自然に近い場所で暮らしたいと思っていた。土に触れ、人が集う場所を作りたい」。来春、新たな生活を始める予定だ。「コロナで人とのつながりが断たれようとする中でも、ゲストハウスのような場所は必要とされる。つながりを大切にする人たちに向け、動きますよ」(林敏行)

【動画】新型コロナウイルスが人々の生活の姿を変えた2020年。国内の動きを映像で振り返る