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 鳥取県南東部の若桜(わかさ)町に獣肉解体処理施設「わかさ29(にく)工房」がある。同町と、隣町の八頭(やず)町の猟師が仕留めたシカを車で運んでくる。1日平均7、8頭。年間だと2753頭(昨年度)になる。「本州では断然トップ」(若桜町農林建設課)という。

 解体処理は屋外で始める。ガスバーナーの火を全身にあててマダニを焼き、焼けた毛や、足などに付いている土を高圧洗浄機などで洗い流す。この後、屋内に運び入れ、ナイフで内臓を取り出し、皮をはぐ。枝肉状態にした後、モモ、カタ、ロースなどの部位別に切り分けて冷蔵庫へ。ここまでを50分以内で終える。

 工房の施設管理責任者の河戸建樹さん(47)は「早くした方が細菌の増殖を防げる。肉質は落ちず、臭みが出ない」と話す。猟師にも、その場で血抜きをし、2時間以内に搬入することを求めている。

 県から衛生管理の国際基準「ハサップ」を満たした施設に認定され、農林水産省からは厳しい衛生管理基準の順守などが求められる国産ジビエの処理施設に認証されているためだ。心臓弁やリンパ節に異常がないかも調べる。

 工房では、運ばれてきたシカはすべて受け入れている。搬入に時間がかかり、血抜きが不十分だったものなどは、内臓の一部と同様にペットフード向けにしている。昨年度は約35トン。年々増えているという。

 食肉としての利用量は昨年度で約30トン。納入先は8割が県外で関西と首都圏のレストランが多い。今春はコロナ禍で納入先が営業を自粛。在庫を抱えたが、日本ジビエ振興協会が企画したカレーなどのレトルト商品向けに出し、解消した。

 シカ肉の特徴について河戸さんは「低カロリーで低脂質。なのに高たんぱくで鉄分が多い。サラダチキンに似た感じ」と説明する。

 若桜町の飲食店も工房の肉を扱う。「ふる~る」は日替わり定食(700円)に鹿ステーキがある。ヒレを使い、ステーキダレをかける。「弾力があり、しっかりした肉」と感じた。店長の清水雅恵さん(68)は「軟らかくクセがない」。

 「ごはんとおみやげyamaneya」はハンバーガー(500円)も。ミンチでパテをつくり、トマトソースをかける。くどくなく、さっぱりした味だ。「トマトの酸味と相性がいい」と経営者の山根裕治さん(34)。「獣臭さがなく、『おいしいけど何の肉』と聞かれる」そうだ。(石川和彦)

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 〈わかさ29工房〉 木造平屋で約90平方メートル。若桜、八頭の両町が有害鳥獣対策の一環として、2012年度に建設した。16年度から指定管理者の「猪鹿庵(じびえあん)」(若桜町)が運営している。従業員6人。シカ肉の販売単価はロースで1キロ3千円、スネやバラで同1千円。イノシシも処理しているが、シカの10分の1程度。肉がうまいことから、猟師が自家消費することが多いという。

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