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医師の身体拘束「違法」と逆転判決 「画期的」評価も

堀越理菜
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 石川県野々市市精神科病院で大畠一也さん(当時40)が肺血栓塞栓(そくせん)症(エコノミークラス症候群)で死亡したのは、違法な身体拘束が原因だとして、両親が社会福祉法人金沢市民生協会を相手取り、約8630万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が16日、名古屋高裁金沢支部であった。蓮井俊治裁判長は「拘束を必要と認めた医師の判断は早すぎ、裁量を逸脱している」として、原告の請求を棄却した一審判決を変更し、約3520万円を支払うよう命じた。

 判決によると、一也さんは2016年12月6日に入院。13日に看護師に対する暴力行為があったなどとして14日から四肢などを拘束され、拘束を解かれた20日に亡くなった。病院側は「多動または不穏が顕著である場合」など、精神保健福祉法に基づく基準に即して医師が拘束開始を判断したとしたが、蓮井裁判長は、拘束開始時点で一也さんに興奮や抵抗はなく、要件を満たしていないと指摘。人を割けば必要な医療ができ、「身体拘束以外によい代替方法がない場合」にも当たらず、拘束を違法だったと結論付けた。

 判決後に金沢市内で会見した父の正晴さん(70)は「かずくんは優しい子だった。先立たれてとてもつらい。あの子のためにも、判決を機に日本の医療が変わってほしい」と話した。同席した、身体拘束の問題に詳しい杏林大学の長谷川利夫教授(保健学)は「国内で身体拘束に頼った医療が広く行われるなか、拘束開始について法律に則して違法と明確に示した画期的な判決。今後、一定の歯止めがかかるのではないか」と評価した。

 社会福祉法人の担当者は「判決文を受け取っていないので詳細は答えられない。内容を確認した上で対応を協議する」とコメントした。(堀越理菜)

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