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 和歌山県議会は17日、新型コロナウイルスに関する誹謗(ひぼう)中傷を禁止する条例案を可決した。インターネット上で感染を言いふらしたり、名誉を傷つけたりする投稿をした人に削除を促すほか、プロバイダーに削除協力を求めることなどが盛り込まれている。

 一般財団法人の地方自治研究機構によると、新型コロナに関して差別を禁止する理念条例や感染対策を定めた条例は東京や愛知など9都県28市町村で制定されたが、投稿の削除を促すことやプロバイダーに協力を求めることをうたった条例は全国初という。

 条例は、県人権尊重の社会づくり条例に基づき、新型コロナに関する誹謗中傷がない社会づくりを目的に定められた。感染やその恐れがあること、店などが感染防止対策を取っていないことなどについて、それが事実かどうかにかかわらず、ネットや貼り紙などで誹謗中傷することや、本人の同意なく公表されていない情報を公にすることを禁止する。

 また、県は市町村と連携して、違反行為をした人に情報の削除を促すほか、プロバイダーに削除協力を要請する。

 17日の本会議では、共産党県議が「県の主観的判断により、誹謗中傷が認定される危険がある」「新型コロナに特化した条例制定は真の解決につながらない」などと反対意見を述べたが、条例案は賛成多数で可決された。

 県によると、条例制定の検討を始めた10月13日から11月末までに、県内の特定の団体や個人に対し、感染を批判するなどの悪質な書き込みが4件見つかったという。県は、こうした誹謗中傷への実効性のある対応のため、条例が必要と判断したという。仁坂吉伸知事は8日の一般質問で「コロナに関するいじめや誹謗中傷は、いかなる人にも絶対にしてはいけない義務がある。権利が侵害された場合に行政指導・措置ができるようにすることを条例として規定する必要がある」と理由を説明した。

 ネット上の人権侵害問題に詳しい神田知宏弁護士は、プロバイダーへの削除協力について「新型コロナの感染を公表するようなプライバシー侵害やサイトの利用規約に違反する書き込みは削除しやすいのではないか」とみるが、「名誉毀損(きそん)を理由に削除依頼をすることは表現の自由を制約することにもつながる。削除するかどうかは、プロバイダーの判断になる」と話した。(西岡矩毅)