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 キャップをかぶり短髪の頭を保護する。サージカルマスクをし、フェースシールドをつける。患者に触れるときは手袋も着用する。新型コロナウイルスの感染が拡大した今年4月以降、奈良県の呼吸器内科医の男性(67)は、このスタイルで診療を続けている。

拡大する写真・図版マスクにフェースシールド、頭にはキャップをつけるのが男性医師の現在の診察スタイルだ(画像の一部を加工しています)=本人提供

 徹底した感染防護策をするのは、2019年4月に肺がんの再発、転移がわかり、抗がん剤による治療中だからだ。治療中は免疫が低下し、新型コロナにかかわらず感染症にかからないように注意が必要だ。がん治療中の患者は、新型コロナに感染すると重症化のリスクが高いという報告もある。

 男性が経営する医院には、がんのことを知る患者も、知らない患者も来る。約20年前の開業初期から通う患者もいる。休診日と産業医として会社に出向く日を除き、医院を開けている。

 これまでと対応を変えた点もある。新型コロナの流行による特例措置で、電話による診療で薬の処方だけに切り替えたり、必要に応じて他院へ紹介したり。薬をのんでいるが血圧が不安定だ、という患者は対面で診察している。「血圧が下がれば危ない人もいて、『急に休診します』というわけにはいかない。医師と話をすることで満足して落ち着く患者さんもいてはるからね」

手術で切除のはずが…

 18年8月、その10年前に患った心筋梗塞(こうそく)の経過観察で撮ったCTで、偶然右側の肺に影が見つかった。1.3センチの肺がんで、「ステージ1A」の早期だった。自覚症状はなく、手術で切除した。

 だがその半年後、腫瘍(しゅよう)マーカーの数値が上がり始めた。医院を開業する親友の医師に相談すると、こう言われた。「おかしいやろう? 再発ちゃうか」

 19年4月に受けたPET検査で、肺を包む膜「胸膜」にがん細胞が散らばっている「胸膜播種(はしゅ)」という転移で、再度の手術はできない状態になっていた。

 予想はしていた。「いつ死ぬか、と思っていたら生きていかれへん」。親友の医師には「できれば最後は家で。診てくれるか?」と伝えた。親友は「できることはする。まずは治療してからの話やないか」と応じた。抗がん剤治療が始まった。

 男性はがん再発後、免疫チェックポイント阻害剤も含め、3パターンの抗がん剤治療を続けた。1年前よりも体重は15キロ減った。

 腫瘍マーカーの値が最も下がった際に使っていた抗がん剤で治療を続けていたが、白血球や血小板が減る「骨髄抑制」の副作用が強く、免疫のはたらきが低下した。標準治療の量よりも減らしてみたが、期待するような効果は得られなかった。

 今年2月、男性は当時の担当医から「終末期のことも考えておいてください」と告げられた。

 ほかに治療はないのか。県外の…

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