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 医療者が使う手袋は「清潔」なものと「不潔」なものとがあります。医学用語でいう清潔とは、滅菌され生きている病原体がまったく付いていない状態を指し、日常で使われている意味とは違います。滅菌されていなければ新品でも医学的には不潔なのですが、誤解を招かないよう最近は「非滅菌」とも呼びます。

 みなさまになじみがあるものでは、ドラマや映画で、胸の前に両手を挙げて「いまからオペを開始する」などと宣言する外科医が着けているのが滅菌された清潔な手袋です。内科医も大きな血管を刺す処置などのときには滅菌手袋を着けます。滅菌手袋を着けるには手順が大切です。きれいに洗った手も医学的な意味では不潔ですので、手袋の外側をうっかり触らないように慎重に着けます。

 新型コロナウイルスの検査のため患者さんの鼻から検体を採取するときにも、マスクやゴーグルやガウンとともに医師は手袋を着けますが、この手袋は滅菌されていない「不潔」なものを使います。患者さんがウイルスに感染していてもいなくても、もともと鼻腔(びくう)には常在菌がたくさんいます。皮膚を切り裂いて手術をしたり大きな血管を刺したりするわけではないので滅菌した手袋を着ける必要がないのです。

 新型コロナの検体を採取する時の手袋の着用は、個人防護が目的です。患者さんがせき込んだり、くしゃみをしたりすると大量のウイルスが付着する可能性があります。もちろん、手袋は患者ごとに交換します。そして個人防護用の手袋を外すのにも手順があります。

拡大する写真・図版手袋の着脱方法(厚生労働省「感染対策普及リーフレット」から)

 手袋の外側は汚染されていると想定し、素手では触らないようにします。まず手袋をしたまま反対側の手袋の手首の部分をつまみ、裏返すように外します。外した手袋はそのまま捨てずに手袋をしたほうの手で持ちます。もう一方の手袋を外すときは汚染された外側を触らないよう袖口の内側に指を突っ込んで、やはり裏返すように外します。裏表が逆になっていますので、捨てるときには汚染された側が内側になっています。

 大事なのは、手袋を外したあとにすぐ手指消毒または手洗いをしっかりやることです。正しい手順で外したつもりでもうっかりミスしているかもしれませんし、もしかしたら手袋に小さい穴が開いていたかもしれません。

 手袋の外し方は一度覚えてしまえば時間をかけずにできますし、手袋の外側は汚染されているという意識を持つことにもつながります。医療現場ほどの厳密さは必要ないですが、日常生活で感染予防のための手袋をしている方は参考にしてください。そして手袋を外した後は手洗いをお忘れなく。

これまでの連載から80回分を収録「医心電信―よりよい医師患者関係のために」(医学と看護社、2138円)。https://goo.gl/WkBx2i別ウインドウで開きます

<アピタル:内科医・酒井健司の医心電信・その他>http://www.asahi.com/apital/healthguide/sakai/

拡大する写真・図版内科医・酒井健司の医心電信

酒井健司

酒井健司(さかい・けんじ) 内科医

1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。