【動画】渋沢栄一アンドロイド、夏目漱石アンドロイドと共演
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 新1万円札の肖像に採用された「日本資本主義の父」渋沢栄一のアンドロイド(人間型ロボット)と、明治の文豪・夏目漱石を再現した「漱石アンドロイド」が共演した特別講座が今月12日、二松学舎大学九段キャンパス(東京都千代田区三番町)であった。2人は“初めて”対談。渋沢の経済哲学を学ぼうと、「『論語と算盤』から生まれる未来」をテーマに議論した。シンポジウムは全国にライブ配信された。

 共演は、同大と朝日新聞社の教育フォーラム“朝日教育会議2020”の中で実現した。

 渋沢は1840(天保11)年、埼玉県深谷市の農家に生まれた。銀行、鉄道など、生涯で500社以上の企業の設立にかかわったとされ、日本の産業近代化に大きな役割を果たした。2024年度から「1万円札の顔」となる。また二松学舎の第3代の舎長として学問と経営の責任者も務めた。また、漱石は1881(明治14)年に入学し、漢詩や漢学を学んでおり、いずれも同校との縁が深い。

 「論語と算盤」は、渋沢の経済への考えをまとめた有名な著書で、親しかった二松学舎の創立者・三島中洲(ちゅうしゅう)との交流が、執筆のきっかけとなったとも考えられている。このため、今回、議論のテーマに選ばれた。

 対談では、まずアンドロイドの先輩、漱石アンドロイドが、実際にあった渋沢と三島のやりとりを披露しつつ、「渋沢先生は『道徳なき商業における拝金主義』を最も憂えておられました。商業と道徳をつなぐものとして論語を選ばれた」などと紹介した。

 これを受け、渋沢アンドロイドは「本日は、私の主義である『道徳経済合一説』についてお話ししたい」と語り始め、「世の中が進歩し、社会もますます発展した。しかし、それに伴って肝心な道徳仁義も進歩したかというとそうではない。逆に大きく後退した。道徳と経済は両立して進むべきもので、論語を基本とした私の主義である『道徳経済合一説』が、みなさんの考えとして社会に受け入れられることを期待する」と述べた。

 対談では、千円札に描かれた漱石が「1万円札の肖像に選ばれたそうですね」と質問すると、渋沢が「大変驚きました。自分の顔が日本中に配られると思うと居心地が悪い気持ちですが、名誉なことでありがたく思います」と応じた。

 録音された会話だったが、自然に成り立っているようなやりとりだった。

 その後、「『論語と算盤』がつなげる未来への新しい学び」と題し、渋沢史料館(東京都北区西ケ原2丁目)の井上潤館長、アンドロイドを開発した大阪大学の石黒浩教授、二松学舎大学文学部の町泉寿郎教授、来年2月から放送予定で、渋沢が主人公のNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」で脚本を担当する大森美香さんが参加してパネルディスカッションが行われた。

 渋沢の人間像に迫る中で、「単なる日本を代表する実業家というだけでなく、社会全体を見ながら、自分の利益ではなく、公益を常に考えていた人物」「今言われるSDGs(持続可能な開発目標)の先駆けとも言える考えを持っていた」などの意見が出た。大森さんは「調べれば調べるほど魅力的な人物」などと評していた。(前多健吾)

2人のアンドロイド

 2人のアンドロイドは、いずれも大阪大学大学院基礎工学研究科・石黒浩教授が開発した。夏目漱石アンドロイドは、二松学舎創立140周年の記念事業の一環としてつくられ、2016年に完成。渋沢栄一アンドロイドは、生誕180年にあたる2020年に完成。制作費は深谷市出身のドトールコーヒー創業者、鳥羽博道名誉会長の個人寄付でまかなった。渋沢栄一記念館(同市下手計)に置かれている。