西尾邦明
病気や加齢で食べ物をのみ込むのが難しい人たちがいる。市販の介護食は味も種類も充実してきたが、家族の味にはかなわない。みんなと同じ食事がしたい――。そんな願いをかなえる家電を、京都のベンチャー企業がつくった。きっかけは創業メンバーの介護体験だった。
「おいしい!」
大きくあけた口にステーキを運ぶと、もぐもぐもぐ。「まだお肉食べる人?」「はい!」。元気いっぱいの返事に、全員の笑顔がこぼれた。横浜市の豊田(とよた)千春さん(36)は昨夏、長男の時央(ときお)くん(5)とすごす食卓が明るくなった。
時央くんは脳性まひで、食事をのみ込みにくい嚥下(えんげ)障害がある。千春さんはこれまで、食事をミキサーにかけてから裏ごしし、ペースト状にしていた。時間をかけて作っても、食事を嫌がった。「家族と同じものが食べたかったんです」
そんな生活を一変させたのが、京都市の家電ベンチャー「ギフモ」が2020年7月に出した「デリソフター」という製品だ。炊飯器のような機械に食事を入れると、野菜なら15分、肉なら30分ほどで舌や歯茎でつぶせるほど軟らかくなる。圧力鍋の原理を応用したもので、味や形はそのまま。唐揚げやまんじゅうなど100品に対応する。
千春さんは「時央は食事に前向きになり、体重や使う言葉も増えた。家族の生活の質がぐっと上がった。心を満たしてくれる、こんな家電は初めて」と話す。
■きっかけは創業メンバーの介護…
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