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 新型コロナウイルスが確認されてから1年ほどで、世界はワクチンを手に入れた。米製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンは英米などで接種がスタート。米バイオ企業モデルナのワクチンも米国で近く、接種が始まる。異例のスピード開発による成果は、パンデミック(世界的大流行)を収束へと導くのか。

 8日、英国中部の都市コベントリー。一人の女性が接種を受ける姿が、世界中のメディアに流れた。元宝石店員マーガレット・キーナンさん(91)。英国でのワクチン接種第1号となった。英BBCによると、このとき着ていたクリスマス柄のTシャツは慈善団体が販売していたもので、国外からも注文が殺到した。

 「日常を取り戻そうとする中で、私にとっても世界にとっても大きな一日になった」。キーナンさんは接種の翌日、そう話した。英国では最初の1週間で13万8千人が接種を受けた。

 14日から接種が始まった米国。バージニア大学病院のICU(集中治療室)で医師として働くタイソン・ベルさん(37)は15日、接種を受けた。

 新型コロナで運ばれてきた重症患者を何人も診てきた。ふつうに会話していた患者が急激に悪化し、人工呼吸器をつけられ亡くなっていく。「ウイルスのせいで家族がそばにいられず、1人で息を引き取るのを見るのは悲しく、ストレスがかかった」という。

 ベルさん自身も「感染するかも」と恐れていたが、接種したことで「精神的な負担がなくなった。職場を離れる確率も劇的に減る。より多くの患者を診ることができる」と話した。

 カナダなどでも接種を開始。ロシアや中国では独自に開発したワクチンの市民への接種が始まっている。

 中国のチームが新型コロナウイルスのゲノム配列を発表したのが1月。そこから1年足らずで、複数のワクチンが実用化にこぎつけようとしている。過去、実用化まで最速だったワクチンはおたふく風邪とされるが、それでも4年を要している。そのスピードに世界が驚いている。

 国をあげた開発支援もあったが、ワクチン開発の技術革新の影響が大きい。

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 ファイザーとモデルナは「RNA」と呼ばれるウイルスの遺伝物質を使ってワクチンをつくった。ウイルスの遺伝子の配列さえわかれば、短期間で開発を進められる利点がある。

 とくにファイザーのものは日本でも18日に承認申請されるなど、いち早く実用化に至った。注目を集めているのが、共同開発したドイツ地方都市マインツの企業ビオンテックだ。12年前、トルコ出身の親をもつ研究者の夫妻ウール・シャヒンさん(55)、エズレム・テュレジさん(53)が中心となり創業した。医学部を卒業し、大学病院で出会った2人はいま、それぞれ最高経営責任者(CEO)、最高医療責任者に就く。

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