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 【長崎】諫早湾干拓事業をめぐり、野上浩太郎農林水産相が20日、就任3カ月を経て初めて視察に訪れた。開門調査を命じた福岡高裁の確定判決から10年。漁業者らは回復のめどが立たない有明海の窮状を訴えたが、野上農水相は「開門せず」という立場を崩さなかった。

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 野上農水相は、開門を求める訴訟の原告団・弁護団と佐賀市内で会った。確定判決の勝訴原告の平方宣清さん(68)は「このままでは地域が消滅する。何とか1日でも早く開門調査をして、不漁の原因を解明してほしい」と訴えた。

 馬奈木昭雄弁護団長は「利害関係者が一堂に会した話し合いの場」を設けることへの見解を尋ねた。野上農水相は「様々な立場の関係者の意見に耳を傾けたい」と応じつつ、「予断を持った答えは差し控える」とした。

 野上農水相は開門判決から10年経ったことについて記者団に問われ、「様々な司法判断があり、開門を望む声がある一方、望まない声もある」とし、開門しないで解決を目指す国の従来の主張を繰り返した。(山野健太郎)

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 野上農水相は午後、佐賀市で佐賀県有明海漁協の幹部や山口祥義知事と面会した。

 漁協側は、赤潮の頻発や二枚貝の不漁に悩まされる現状を説明。9季連続で休漁となったタイラギ漁の漁師が多い大浦支所の貞包(さだかね)保則運営委員長は「このままでは、地区の潜水器漁業は存続できない。今まで以上に、有明海再生事業の予算確保を」と訴えた。白石支所の岩永政幸運営委員長は「堤防閉め切り後、環境悪化を肌で感じる。開門調査を含む調査を急いでほしい思いがある」と求めた。

 野上農水相は「一刻も早い有明海再生を望む、切実な思いを強く感じた。我々も全く同じ思いだ」とする一方、「開門によらない基金による和解を目指す方針のもと、適切に対応する」とも話した。(福井万穂)

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 野上農水相は、長崎県諫早市の諫早湾干拓地でミニトマトなどの営農状況を視察後、昼過ぎから市内のホテルで中村法道知事や営農者と意見交換に臨んだ。

 中村知事は、今夏の豪雨でも調整池の防災機能が発揮されたと説明し、干拓事業の防災効果を強調。一連の訴訟の早期解決、基金による有明海再生、調整池の水質改善の3点を要望。営農者も「開門しない方針を堅持して」と訴えた。

 野上農水相は「開門によらない基金による和解を目指す方針のもと適切に対処していきたい」と応じた。散会後、訴訟以外で和解協議の場を設ける考えがないか報道陣に問われると、「様々な考えの人がバランスよく会する場があれば……」と言葉を濁した。(原口晋也)

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