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 政府は21日午前、2021年度の当初予算案を閣議で決める。コロナ禍の今年はすでに3回、緊急対応として予算編成を重ねた。その姿は、いびつさともろさがひときわ際立つ。菅義偉首相は、重みを増す公助の意味合いを「最後は国がセーフティーネットで守ってくれる」と繰り返してきた。「公助」を支える土台となる予算のありようは、何か語るだろうか。

1次補正、10万円支給へ閣議やり直し

 手始めは、緊急事態宣言下の4月末に成立した、今年度の1次補正予算だった。国民全員への10万円の給付金は、政府が予算案を決めた後に飛び出した与党幹部の発言を受けて、突然、実現した。

 2年分の公共事業費にも相当する12兆円超を投じる給付金の規模も、中心となる政策の差し替えによる閣議決定のやり直しも、前代未聞。本当に困っている人を国がつかみ切れないので、所得制限なく全員に配るほうが、早く手元に届く。そんなねらいが説明された。

2次補正、予備費なのに10兆円

 ほぼ1カ月後の2次補正予算には、10兆円の予備費が入る。予備費とは、国会の議決がなくても、政府が自由に使える例外的なお金のこと。チェックが利きにくい白紙委任は慎重であるべきなのに、自民党では「50兆円」を求める声が相次いだ。東日本大震災が起きた11年度の2兆円近くを、はるかにしのぐ金額だ。このとき官房長官だった菅さんは「多くつけるべきだと、与野党から強く要請があった」と説明した。

 先の見えない感染症と、急速に縮んだ経済活動を目の当たりにして、重視されたのは内容にも増して金額の大きさだった。兆円単位の政策が目白押しとなった二つの補正予算は、合計で57兆6千億円。元手はすべて、借金となる国債が充てられた。

 コロナの感染拡大は夏場も収まらず、その勢いは冬に入って猛烈に増す。安倍政権から菅政権へと代わっても、巨額の予算を投じた効果や反省点の深い検証には、とても踏み込めない。

3次補正、「火事場泥棒のように増加」

 12月半ばの3次補正予算案も、財務省幹部の目には「論理性を欠いたまま、金額は兆円単位で、火事場泥棒のように増えていった」と映った。コロナ対策を主眼とし、法律で「特に緊要となった経費」に限ると定める補正予算であるのに、脱炭素の技術開発を支援する2兆円の基金が、首相の強い意向で当確に。公共事業や「自衛隊の安定運用の確保」という防衛費、農家の支援策など、当初予算から例年こぼれ落ちるものも含め、最終的に20兆円規模になった。

 来年度の当初予算案でも、コロナ対応の予備費に破格の5兆円を積む方針は、早々に決まる。

空前の借金、「本当に大丈夫か」

 一方で、高齢人口が増えて出生数が減り、経済成長しにくい構造的な危機への対応となると、政治の動きははるかに鈍い。格差や不公平感をならす改革に踏みだそうにも、平時以上にためらいが生まれる。

 75歳以上の医療費の自己負担分を一部で引き上げる方針は決まったが、現役世代の保険料負担を抑える効果は、厚生労働省の試算によると、1人年800円ほどにとどまる。税制改正では、企業や個人が目の前の「納税しうる体力」を取り戻せるようにと力を注ぎ、不公平が指摘される年金や株式への税負担のあり方をめぐる議論には、ほぼ手をつけなかった。民間の議員が首相に「リーダーシップの十全な発揮」を求める経済財政諮問会議も、「歳出効率化のしくみの構築」などを求めたものの、具体化を迫る胆力は感じられない。

 家計では考えられないが、コロナ以前でも日本は税収の15~16年分にあたる900兆円近い借金を抱え、貯蓄はない。そこへ20年度だけで新たに、112兆円超の国債を発行する。コロナ前の年間予算を上回る、突出した領域に足を踏み入れた。

 コロナ対策のための多額の借金を中央銀行が買い支える構図は、世界で共通する。自国通貨建ての国債ならリスクは低く、インフレになるまではいくらでも支出は増やせるという主張も勢いを増す。だからといって、「低金利が続く」「インフレはこない」という保証にはならない。

 「こんなにも借金を重ねて、日本は本当に大丈夫なのか。大量の失業や年金の目減りが押し寄せる時代がくるのでは」。漠然としていても、人それぞれに不安を抱いているようにも思う。

 菅さんは公助について、「必ず国が責任を持つ」とも言い切ってきた。

 日本は、支えを必要とする人に手を差し伸べて、セーフティーネットやさまざまな公共サービスを安定して提供できる国だろうか。菅政権が初めてつくる当初予算案は、コロナ対応とともに、将来の安心も得られる土台となっているのか。確認したい。(編集委員・伊藤裕香子)