米山正寛
植物の異なる個体をつなぐ接ぎ木。果樹や野菜を育てる園芸農業の世界では、もはや欠かせない技術だ。成立するしくみは実はまだ十分にはわかっていないが、その謎を解き明かし、新たな利用を広げる研究が進んでいる。(米山正寛)
拡大するグラフィック・山市彩
植物を茎や枝の途中で切り、別々の個体の上部(穂木(ほぎ))と下部(台木(だいぎ))をつなぐのが接ぎ木だ。切断面をくっつけて、つなぎめをクリップで留めたりテープで巻いたりして、数週間から数カ月間保つ。その間に、水や栄養の通る道管や師管のつながりも含めて、自然に接着する。台木につけた切れ目に穂木を入れる割り接ぎ、初めは穂木も根を切り離さずに台木と切れ込みを合わせる呼び接ぎなど方法はいくつかある。病気を防いだり生産性や品質を向上させたりと、いろいろな目的で実施されている。
果樹では、ほぼすべての品種が接ぎ木で増やされる。農研機構果樹茶業研究部門によると、リンゴの「ふじ」は全国に推定で1億本以上の木があるが、1本の母樹から接ぎ木で増やされたそうだ。果樹の収穫効率を高めるには木が小さいと都合が良く、背が高くならない台木も使われている。
拡大するサクラの「ソメイヨシノ」も多くが接ぎ木で増やされてきた
果樹などの接ぎ木は紀元前のギ…
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