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 「あー寝坊した!」。ただでさえバタバタする出勤、通学前の時間帯なのに、寝坊したらパニックになってしまいます。「朝のいつもやること」に無駄な作業ってあまりないと思いますが、緊急事態にはどうすればいいのでしょうか。これは年末の仕事納めに向けて、たまった仕事をどうこなしていくかにもつながります。臨床心理士の中島美鈴さんが解説します。

仕事は「重要度」と「緊急度」を意識

 複数のタスクのある場合の優先順位づけについてここ数回ご紹介してきました。前回は「重要度」を自分の仕事の価値観に基づいて判断して、仕事を請けるか断るかを決めるということを書きました。今回は重要度と並んで重視されている「緊急度」についてご紹介します。

 緊急度は、一言で言えば、締め切りがどれぐらい迫っているかです。私もずっと「緊急性はシンプルな概念だから、特に解説は必要ない」と思っていましたが、最近「実は緊急性って深いのかも」と思うようになりました。というのも、こんなケースであたふたする方もけっこういらっしゃるからなんです。

 ナルミさん(30代女性一人暮らし、仮名)は、寝坊しました。今、午前7時15分です。仕事に間に合うには、あと30分で家を出なければなりません。

 ナルミさんはいつもならトイレに行って、カーテンを開けて、トーストと即席カップスープの朝食をとって、着替えて、歯磨きして、メイクして、ヘアセットをして、出発しています。

 さて、みなさんがナルミさんの立場なら何をどの順番でおこないますか? それぞれにかかる時間をかっこ内に示しています。

 【ナルミさんのいつもの朝のタイムログ】

・トイレ(2分)

・カーテンを開ける(1分)

・トーストと即席カップスープ作る(5分)

・朝食をとる(10分)

・着替える(5分)

・歯磨き(5分)

・メイク(10分)

・ヘアセット(5分)

 ナルミさんには、それぞれの項目の締め切りに基づいて緊急性を判断して、優先順位づけをしてもらおうとしました。しかし、困ったことにこんなふうになってしまったのです。

 【ナルミさんがいつも朝することの優先順位づけ】※()内は所要時間、時刻は締め切り時間

○トイレ(2分) 7:45

○カーテンを開ける(1分) 7:45

○トーストと即席カップスープ作る(5分) 7:45

○朝食をとる(10分) 7:45

○着替える(5分) 7:45

○歯磨き(5分) 7:45

○メイク(10分) 7:45

○ヘアセット(5分) 7:45

 そうですね。午前7時45分までに支度を終えないといけないので、どれも緊急なんですね。でもこれではどこから手をつけていいかわかりません。

 第一、すべてのタイムログを足し合わせると、合計43分になってしまうのです。ナルミさんの今日の持ち時間は30分です!

まずは最低限重要なものを整理

 まずは重要度で項目を削るのが大事でした。この場合には、「玄関を出るときの自分」をイメージします。その時に、何が最低限できていると会社にいけるかで重要度を判断していきます。

 ナルミ「そうですね。メイクと朝食は職場でもできるかな。ノーメイクでもどうせマスクで見えないし。カーテンも開いてなくても仕事には行ける。でも着替えと最低限のヘアセットは必要。もちろん、トイレも」

 いいですね。項目がずいぶん減りました。

 【ナルミさんがいつも朝することの優先順位づけ】※()内は所要時間、時刻は締め切り時間

○トイレ(2分) 7:45

×カーテンを開ける(1分)

×トーストと即席カップスープ作る(5分) 7:45

×朝食をとる(10分)

○着替える(5分) 7:45

×歯磨き(5分)

×メイク(10分)

○ヘアセット(5分) 7:45

 これなら12分です。それならご飯も食べましょうか。そしてそれぞれの締め切りを自分で区切っていきます。誰も別に「ナルミさん、まずは午前7時35分までに朝食を終わらせて」なんて決めてくれないので、自分で逆算します。

 ナルミ「出発前に歯を磨きたい。そのためには、午前7時35分までに朝食を終わらせよう」

 【ナルミさんがいつも朝することの優先順位づけ】※()内は所要時間、時刻は締め切り時間

○トイレ(2分) 

○着替える(5分) 

○ヘアセット(5分) 

○トーストと即席カップスープ作る(5分)

○朝食をとる(10分) 7:35

○歯磨き(5分) 7:40

出発! 7:45

×カーテンを開ける(1分)

×メイク(10分)

 なんとなく大きな塊だった30分という幅のある時間に、ひとつ杭が打ち込まれました。この手がかりができれば、他の順番や締め切りも見えてきます。

 【ナルミさんがいつも朝することの優先順位づけ】※()内は所要時間、時刻は締め切り時間

○トイレ(2分) 7:15

○着替える(5分) 7:20

○ヘアセット(5分) 7:25

○トーストと即席カップスープ作る(5分) 7:30

○朝食をとる(10分) 7:40

○歯磨き(5分) 7:45

出発! 7:45

×カーテンを開ける(1分)

×メイク(10分)

 全部入れてみると2分ほど時間が足りませんね。困りました。

 ここで緊急時にどれから手をつけるかを決めるポイントを紹介します。プランを見直してみましょう。

緊急性の優先順位づけのポイント

 ポイント1:時間のかかるもの、かつ、自動でやってくれるものは先(例:コピー、ウイルススキャン、レンダリング、仕事の指示など)

 ポイント2:同時並行作業できるものはペアにする(例:移動中の新幹線で資料作成、駅に行くついでにポスト投函(とうかん))

 さて、ナルミさんの朝準備では「トーストの準備とスープ用のお湯をわかす」は自動でやってくれることですので、着替えとヘアセットをしている間にトースターとやかんにやってもらいましょう。

 【ナルミさんがいつも朝することの優先順位づけ】※()内は所要時間、時刻は締め切り時間

○トイレ(2分) 7:20

◎トーストと即席カップスープ作りながら着替える(5分) 7:25

○ヘアセット(5分) 7:30

○朝食をとる(10分) 7:40

○歯磨き(5分) 7:45

出発! 7:45

×カーテンを開ける(1分)

×メイク(10分)

 おさまりました! いかがでしたか? 「あれもこれも緊急なの!どうしよう!」というときにパニックにならずに済む方法でした。

 今回が2020年の最後のコラムになります。コロナなど予想外の出来事のあった1年でしたが、こうしてコラムの連載が続けてこられたことに感謝します。また新年からもよろしくお願いいたします。

 ◇「年末・年始企画第3弾」

 このコラムの筆者が「年間計画を立てる会」をオンライン開催します。働く人を対象に、2021年の目標を確実に達成するための年間計画を立てるワークショップをします。詳細はこちら(https://peatix.com/event/1687481別ウインドウで開きます)から。

中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。