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 いくつになっても働き続けたい――。そう思っていても、年を重ねると体の衰えは避けられません。わずかな段差でつまずいたり、若い頃は見えた物がぼやけたり。仕事中のけがへの不安は、働き手だけでなく雇い主も抱える悩みです。「社員の3割が60歳以上」という千葉県の中小企業が、こうした課題に立ち向かうべく、地道な工夫を重ねています。

拡大する写真・図版ミシンには、手元を明るく照らすライトを取り付けている=千葉県南房総市

 2021年4月から、高齢者の雇用ルールが変わります。今も会社は希望者を65歳まで雇い続ける義務がありますが、さらに70歳まで仕事を確保する努力が求められます。政府が「高齢者活用」に急速にかじを切るなか、重要な二つの課題が生じています。この記事では「職場環境」について考えます。

 千葉県南房総市に本社を置く縫製メーカーのグロリアは、主に警察官ら官公庁の制服を年17万着ほどつくる。市内の工場で、一枚の布から専用ミシンでシャツなどをつくり上げる。社員のほとんどが、その作業に携わる。

 4年前までは60歳が定年で、希望者は1年契約を更新しながら原則65歳まで再雇用していた。南房総も少子高齢化の例外ではなく、次の担い手を求めて新たな求人を出しても、応募してくる人は少ない。熟練した技術を持つシニア社員には、なるべく長く残ってもらう必要性を感じていた。

定年後再雇用の「限界」

 しかし2016年に、制度の「限界」があらわになった。老朽化した工場の移転計画が持ち上がると、それを機に仕事人生に一区切りつけようと、65歳を前に退職を考える60代の社員が続出したのだ。

 「それは困る」。社長の永井実さん(76)は焦った。そして選んだ選択肢は、定年廃止だった。永井さんは「何歳まで続けてもいいんだということにして、結果的に多くの社員が残ってくれた」と振り返る。

 ただ、人件費はかさんだ。勤続による昇給は60歳までとする従来の仕組みは維持した一方、ボーナスが少なかった契約社員から正社員に戻した人もいたためだ。それでも、人手不足を避けるため背に腹はかえられなかったという。

働きやすく安全に 様々な配慮

 定年廃止の前後から力を入れたのが、高齢の社員が長く働き続けるための環境づくりだ。

 年齢を重ねると、視力や握力、…

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