障害者アート 一点物のバッグに再生 完売も 愛知

小西正人
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 リニューアルした名古屋市久屋大通公園の一角に、異彩を放つ期間限定の小さな美術館がある。展示しているのは、知的障害や精神障害のあるアーティストたちの作品の拡大プリント。作品は展示後にバッグに生まれ変わり、販売される。

 公園内の名古屋テレビ塔近くにある美術館は「ヘラルボニーサステナブルミュージアム」。開館期間は公園が再開した9月から12月末までの予定だったが、好評のため来年1月末まで延長が決まった。

 約200平方メートルの館内(入場無料)には、縦横約1・6~3メートルのシートに拡大プリントされた作品が12点並ぶ。どれも色彩が豊かで大胆だ。いまは名古屋市や三重県出身の作家を中心に展示している。

 館内中央に展示されているのは三重県在住のJuriさんの作品。縦2メートル横3メートルのシートに拡大され、画面いっぱいに人や動物、食べ物が独特のリズムで細かく描き込まれている。カラフルでポップな作品に、思わず顔を近づけて細部を見つめたくなる。

 作品のプリントシートはそれぞれ1枚だけ制作し、展示終了後に素材にして複数のトートバッグに加工される。どの部分がバッグになるかはわからないので、すべて一点物だ。1個2万7500円(税込み)で予約販売を受け付けている。すでに完売したものもある。バッグは約3カ月で購入者に届けられる。

 運営会社「ヘラルボニー」(岩手県)は、知的障害のあるアーティストの作品をデザインとして使ったネクタイやスカーフ、マスク、エコバッグなどを商品化しているアパレル会社。社名の「ヘラルボニー」とは、同社代表の自閉症の兄が7歳の時に自由帳に記した「謎の言葉」だという。

 「私たちは福祉というより、障害のある人たちをビジネスパートナーとして対等な関係で見ています」と名古屋の責任者大田雄之介さん(28)は言う。東北や東京で展開していた同社が名古屋に進出したきっかけは偶然だった。

 開店予定だったラーメン店がコロナ禍で出店を取りやめ、空いたスペースを埋めるため、公園の管理会社から声がかかった。飲食店や雑貨店が並ぶ公園内では異色だが、逆に人が立ち寄るスポットになっている。「作品を見た人たちが『楽しかった』とか『かわいい』と言ってくれるのがうれしい」と大田さん。エコバッグなどのグッズ販売を含めた売り上げも順調で、月300万~400万円をキープしているという。(小西正人)

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