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 新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)された2020年。国が緊急事態宣言を出した春ごろは、四国もはりつめた空気に覆われていた。

 4月22日、四国の東の玄関口、神戸淡路鳴門自動車道の鳴門インターチェンジの料金所わきで、双眼鏡を手にした見慣れぬ人々を見かけた。県内へ流入する県外ナンバー車に目を光らせる徳島県の職員だった。

 その5日前、飯泉嘉門知事は新型コロナの感染拡大防止策として、県民に県境をまたぐ不要不急の移動自粛を要請。県外に向けても「来県をお断りする」と強い口調で迫った。

 「現代の関所」とも言える料金所の光景は、全国を覆ったコロナ禍の象徴的な出来事の一つだった。

 自粛ムードが広がる中、4月には徳島の阿波踊りや高知のよさこい祭りなど夏の風物詩の中止が相次いで決まった。その後も各地で神社の祭礼や花火大会、秋祭りなどの今年の開催が取りやめになった。

 徳島の阿波踊りが中止になるのは戦後初めて。「踊りのない夏」は地域経済に大打撃を与え、観光業だけでなく、幅広い業種に及んだ。祭りの衣装や小物、鳴り物を扱う地元の老舗店を取材で訪ねると、例年なら客足が途絶えないという店内はひっそりとしていた。

 ウィズコロナ時代も見すえ、阿波踊りを来夏に開催するにはどうすべきか。11月の2日間、徳島市などは感染防止対策の検証を兼ねた実証イベントを開いた。桟敷席も設け、人数を制限して観客を入れた。

 会場の市中心部の藍場浜公園。秋晴れのもと、踊り手は間隔をとりながら演舞した。マウスシールドなどを着けたり、向き合ってのかけ声を控えたりするなど試行錯誤していた。観客はマスク姿で静かに踊りを見守った。

 いつもとは違う阿波踊りに観客からは「寂しい」という声も聞かれた。だが、太鼓や鉦(かね)の迫力あるリズムや踊り手らの笑顔からは、コロナに負けられないという気持ちが伝わってきた。

 コロナが一日も早く収束し、来年の夏こそは阿波踊り独特の二拍子のリズム「ぞめき」の響きが街に戻ることを願ってやまない。(伊藤稔、吉田博行)

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