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 子どものゲーム時間などを定めた香川県ネット・ゲーム依存症対策条例は、ゲームをする時間を決める自由を侵害し、憲法違反だとして、高松市の高校生と母親が県に計160万円の損害賠償を求めた訴訟の第一回口頭弁論が22日、高松地裁であった。県側は請求の棄却を求め、全面的に争う姿勢を見せた。

 原告側は訴えで「条例で自分が希望する時間にゲームができなくなった」として憲法13条が定める幸福追求権を侵害したと主張。県議会が募ったパブリックコメントも文言や誤字が同じ賛成意見が多数あるなど制定過程に問題があり、「民主的根拠がない」とした。

 これに対し、県側は「条例はゲーム使用の家庭内での目安を定めたに過ぎず、県民の権利を違法に制限したり、義務を課したりしていない。原告の主張は条例の趣旨や内容を理解しない独自の見解」と反論した。

 閉廷後、原告の高校3年生、渉さん(18)は「ようやくここまで来た。弁護士やお母さんと協力し、裁判を進めていきたい」と話した。(長妻昭明)

制定過程で論議 十分審理を

 高校生を、県を訴えるまで突き動かした条例は一体どのようにできたのか。

 一日のゲーム時間について「平日60分、休日90分」と制限する数字が出てきたのは今年1月のことだ。超党派の議員らによる検討委員会で素案が示された。

 ニュースはネットで若い世代にも拡散し、論議を呼んだ。今回裁判を起こした渉さんはネット上で600筆あまりの反対署名を集め、議会に提出した。

 その後、検討委は時間制限について「家庭でのルール作りのための目安」と表現を弱めたものの、数字そのものは残された。

 県民の幅広い意見を聞くとして県議会が募ったパブリックコメントでも問題が浮上した。検討委は賛成が多かったとしたが、短時間に同じような文言で「条例に賛成」などとだけ記した意見が数百件投稿されていたことが分かった。県議会の複数の会派は「もっと議論を尽くすべきだ」と求めたが、条例は3月、賛成多数で可決された。

 4月の施行後、県教委は小中学校に各家庭でのネットやゲームのルールづくりを勧めるワークシートを配布。「夜9時までには使用を止めます」など「さぬきっ子の約束」と題した呼びかけを載せた。

 条例は、罰則がないとはいえ、私的な時間の使い方に行政が口を挟むようなものだ。渉さんの代理人の作花知志弁護士は「平日60分」など具体的な数字の明記は、県民を萎縮させる効果があると指摘する。

 22日の第一回口頭弁論で県は違憲性はないと争う姿勢を示した。十分な審理が尽くされ、香川の民主主義を一歩前に進めるような裁判になるよう期待したい。(木下広大)