福岡県飯塚市の中山正好さん(73)の作詞した「居酒屋『昭和』」が、日本作詩家協会主催の「第53回日本作詩大賞 最優秀新人賞」を受賞した。全国2190編の応募作のトップに選ばれる快挙。今回の特別企画として歌手の八代亜紀さんらが曲をつけ、八代さん自身が歌うCDも発売された。

♪ひと筋入った横丁で

 昭和を覗(のぞ)いてみませんか

 そんな出だしで始まる酒場歌。「平成、令和と時は移っても、昭和のなつかしさに癒やされる人々へ贈る歌。誰に向かって作詩をするのか明確」と評された。

 中山さんは大学卒業後、会社勤めを経て実家のある飯塚に戻り、大学・短大・高校の職員を約40年務めた。30歳を過ぎたころ、地域の音楽仲間から曲作りに誘われ、作詞を引き受けた。もともと歌が好き。独学で腕を磨いた。

 手がけるのは、もっぱら演歌。七五調の定型詞だ。言葉がふと浮かぶ瞬間を逃さない。断片を付箋(ふせん)紙に書き留めては「このフレーズのこの一語」を練り上げていく。

 今回の新人賞は、日本作詩家協会の創立55年と八代亜紀さんのデビュー50年を記念し、新人賞の最優秀、優秀の2編に、八代さんが曲をつけて歌う特別企画が組まれた。中山さんは「八代歌謡の原点は酒場歌」と狙いを絞った。なじみの居酒屋。旅先でふらり立ち寄る居酒屋。「人生で一番長く生きた時代が昭和。その昭和に再会できる居酒屋に思いを託しました」。歌詞の3番にも、自身の歩みをにじませた。

♪令和にはぐれた路地裏に

 昭和の心が灯(とも)ります

 作詞を始めて40年ほど。日本作詩大賞新人賞は当初から挑戦を続けてきた。2001年に初入選して以来、入選は通算10回。昨年は「めおと寒梅」で初の佳作に。そして今年、ついに栄冠を引き寄せた。

 詞は八代さんが一部手を入れ、八代さんら2人が曲をつけた。10月中旬、東京でのレコーディングに立ち会い、完成した曲を八代さんの歌で聴いた。「しっとりした、いい歌になった」。胸がじんとなった。

 自分専用の520字詰め原稿用紙に清書した作品は約240編に及ぶ。「作詞はドラマ。季節や風景、場のなかで主人公を動かしていく。誰かが曲をつけてくれて歌になる。そこが面白い」

 受賞で一つの山を越えた。「市井の人の思いを、これからも詞にしていきたい」(遠山武)

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