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 ドラえもんは22世紀からやって来た。タイムマシンに乗って。

 実現が難しそうなタイムマシンだが、全くの空想の産物ではない。子ども向け科学書「タイムマシンって実現できる?」(誠文堂新光社発行)を2019年7月に監修した、宇宙論・一般相対性理論を研究する二間瀬(ふたませ)敏史・京都産業大学理学部教授(67)に「タイムマシン研究の現在」を解説してもらった。

ベースは相対性理論

 ――本にはアインシュタインの名前が繰り返し出てきます。

 科学者が提案してきたタイムマシンはどれも、相対性理論を下敷きにしています。私たちの時間のとらえ方を一変させた理論です。

 ――どんな風に。

 私たちは日常生活で、時間が過去から未来へと一定の速さで流れていくものだと感じています。ニュートンが打ち立てた古典的な力学でもそう扱われていました。ところが、1905年、アインシュタインは速く動くほど時間の流れが遅くなったり空間が縮んだりすることに気付き、特殊相対性理論を発表しました。さらに10年後、重力も時間の流れを遅くしたり空間を縮めたりするという一般相対性理論に発展させました。時間や空間は絶対に変化しないものではなかった。

 ――そうするとどうなりますか。

 光速の99%の速さの宇宙船に乗れば、時間の流れの速さが7分の1になります。1年間の宇宙旅行に出て地球に戻ると、その間に地球では7年が経っているので、6年先の未来に行くことになる。

 また、地球上の1500億倍の強さの重力になると考えられているブラックホールの表面では、時間が極めてゆっくり流れています。宇宙船で近くに数時間滞在すると、その間に地球上で数十年経過する計算になり、地球に戻ればそれだけ未来に行くことになります。

新幹線でも10億分の1秒先の未来へ

 ――実感しにくいですね。

 実は、相対性理論は現実に利用されています。

 GPS衛星は、高度約2万キロの上空を秒速約4キロのスピードで飛んでいて、地上よりも1日あたり100万分の7秒ゆっくり時間が流れます。一方、この高度は地上より重力が小さいので、地上よりも1日あたり100万分の45秒早く時間が流れます。差し引きすると、1日100万分の38秒早く時間が流れるので、補正するために衛星に積んだ時計は、1日あたり100万分の38秒遅れるように調整してあります。補正しないと1日に1キロ以上も位置がずれてしまうのです。

 それと、身近なタイムマシンといえば、新幹線です。時速300キロの新幹線で東京から博多に移動すると、時間が10億分の1秒だけ遅れます。新幹線は10億分の1秒だけ先の未来に行けるのですが、誰も納得しないでしょうか。

 ――本では、「ワームホール」を使ったタイムマシンを詳しく書いています。

 重力波観測で2017年にノーベル物理学賞を受賞した米国の物理学者キップ・ソーン・カリフォルニア工科大学教授が1988年の論文で発表しました。

 ワームホールは、はるか離れた場所へ一瞬で移動できる時空のトンネルです。中は強い重力のため、時間がゆっくりとしか流れず、移動時間がかからない。

 ただし、人間が通行できるような大きさのワームホールを作るには、木星10個分の天体を半径30メートルほどの球体にまで圧縮しなければならない。ものすごい高密度の物体を作ることで強い重力が生まれ、あらゆるものがそこに吸い込まれていくブラックホールができる。これを二つ作ってつなげると、人間が通れるワームホールができるというアイデアです。

 ――木星10個を半径30メートルにどうやって圧縮するんですか。

 それくらいの質量を圧縮しないと、計算上、人が通れる大きさのワームホールにならないんですよ。どうやるかは未来の高等文明が考えてくれるでしょう。

 ソーン教授のタイムマシンは、さらにそのワームホールの片方の入り口を光速ではるかかなたへ移動させ、再びまた光速で元の位置に戻すという工程が必要で、そうすることで初めてワームホールの二つの入り口の間に時間差ができ、タイムマシンになるんです。

100年後、ドラえもんはできているかも

 ――聞けば聞くほど難しそうで…

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