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 芸のためには偽りの恋を仕掛け、努力でとどかないスターの輝きに歯ぎしりし、ライバルを亡きものにとまで思いつめる。デビュー作『化け者心中』で描いた業深き歌舞伎役者たち。著者の蝉谷めぐ実さんは、彼らを「私の分身」と呼ぶ。「作家になることができず、くすぶっていた時期の思いが詰まっている。こんな自分がいたかもしれない、という姿です」

 舞台は、享楽的な町人文化の花開いた19世紀前半の江戸。ひいき客に襲われた傷がもとで両足を失った元女形の田村魚之助(ととのすけ)と、鑑賞用の鳥を商う店を営む青年藤九郎(ふじくろう)が、芝居小屋で起きた陰惨な殺人事件に挑む。小説野性時代新人賞の受賞作を大幅に改稿した。

 歌舞伎に夢中になったのは、演劇を専攻した大学時代の講義がきっかけだ。江戸時代の女形には「人前でとろろ汁に箸をつけなかった」といった逸話があったことを知った。日常の生活まで体のすべてを捧げて「女」になりきるありように、強く心をひかれた。

せみたに・めぐみ 1992年、大阪府生まれ。現在は母校の大学職員として勤務。歌舞伎関係の蔵書が豊富な大学図書館の存在が、転職の決め手になった。

 小説を書きはじめたのもこのこ…

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