[PR]

皆さんの身近な困りごとや疑問をSNSで募集中。「#N4U」取材班が深掘りします。

 街中やインターネット上の至る所で、美容脱毛の広告を目にする。いま、脱毛は世代や性別を問わなくなり、処理をする体の部位も広がっている。処理はすべきなのか。そもそも体毛は「むだ毛」なのか。悩みや疑問を募る「#ニュース4U」取材班には、体験談が次々と寄せられた。

そらずにはいられず…

 「脱毛しないと恥ずかしい」。千葉県習志野市の大学生の女性(20)は、カミソリで自らそっている。指の毛は毎日。脚の毛はアルバイトでスカートスーツを着る時だ。

 周りの誰かに毛のことを言われた経験があるわけではない。それでもそらずにはいられないという。「毎回大変です」。カミソリをあてた部分は翌日かゆみが出る。なのに、またすぐ生えてくる。「脱毛サロンに行こうか」。でも数十万円もかかる。手が届かない。

 動画サイトの広告にも、小中学生向けの雑誌にも。「体毛は処理すべきもの」というメッセージは色々なところに出てくる。

 「黒くて太い体毛」が悩みだという東京都の会社員の女性(27)は、子どもの頃から読んでいた雑誌などの影響から、「女性はツルツルでなければという強迫観念がある」と明かす。

 最近は電気シェーバーや家庭用の光脱毛器で処理しているが、産毛の濃さが気になるという。「半袖やノースリーブを着ることはないです。冬は長袖や黒いタイツでごまかせるので、ほっとしています」

    ◇

 体毛の処理はどれほど浸透しているのか。

 「装いの心理学」の編著書がある東京未来大学の鈴木公啓(ともひろ)准教授が3年前、インターネット上で10~60代の男女約9千人に調査したところ、脚や足の指の毛、脇の毛を処理したことがあると答えた20代女性は、いずれも9割超に上った。60代も、脚や足の指の毛が4割余り、脇が7割近くで脱毛を経験していた。

#ニュース4Uの特集ページはこちらから
読者のみなさんから寄せられた身近な疑問を深掘り取材していきます。

 鈴木准教授は「女性にとってむだ毛の手入れをすることは、個人の選択というより、社会の暗黙の了解となっているのでは」と分析する。女性は男性より、季節によって肌を露出する服が増えたり、外見が他人の評価にさらされる機会が多かったりすることが考えられるという。

拡大する写真・図版東京未来大学こども心理学部の鈴木公啓准教授=本人提供

男子高校生も悩む

 脱毛は、男性でも若い世代を中心に浸透してきている。鈴木准教授の調査では、20代では脚も脇も4割超で経験があった。一方で、60代は1割に届かなかった。

 取材班には、男性からも悩む声が寄せられた。

 埼玉県の高校生の男性(17)は、体育の着替えや友達とプールで遊ぶときに、わき毛の処理をするかしないか気になるという。「すべてそるのは恥ずかしいけど、結構毛が濃い方なのでそのままというのも……」。同級生の男子の間で「すね毛はどうすればいいんだろうね」と話題にあがることもあるという。

拡大する写真・図版LINEで寄せられた、体毛についての悩み。男性からの声もあった

    ◇

 小中学生の子どもが脱毛をするケースも珍しくない。取材班にも、保護者からの声が数多く寄せられた。

 東京都の主婦(50)の娘は中1で、バレエのレッスンでわき毛を気にしていた。それをきっかけに今夏、エステサロンで全身脱毛を始めたという。50万円ほどかかったが、「自己流で肌を傷める前に施術できて、親としても安心しました」。

キッズ脱毛や介護脱毛に高い関心

 大手エステサロン「TBC」は、7~15歳対象の「キッズ脱毛」を行う店舗を2011年に開いた。利用客からは「子や孫にも受けさせたい」という声が寄せられ、水泳やバレエなどの習い事や、中学の部活が始まる前に利用するケースが多いという。利用者は年々増え、大阪エリアでみると、15年に比べ19年は3割ほど増加したという。

拡大する写真・図版脱毛サロンのパンフレット。プランも値段も様々だ

 中高年が脱毛を始める理由には、「介護脱毛」がある。将来受ける介護をみすえ、アンダーヘアの脱毛をするケースなどだ。

 医療脱毛のリゼクリニックによると、開院当初の10年からの10年間で、40歳以上で契約した女性の数は75倍にまで増えた。今年も去年から1・6倍になるなど、増え続けている。14年に男性専門のクリニックを開院したが、今年の契約者は前年の1・4倍になった。

 同院の大地まさ代医師によると、陰部を脱毛すれば、炎症や感染症のもととなる排泄(はいせつ)物が拭き取りやすくなり、清潔さを保ちやすくなるなどの効果がある。大地医師は「介護する人、される人の双方にメリットが大きい」と話す。

拡大する写真・図版「ムダ毛」処理に関するリゼクリニックの調査結果

    ◇

脱毛ブーム、実は日本ならでは?

 老若男女で「脱毛」に抵抗がなくなりつつある。この「無毛社会」とも言える状況は、歴史的にも世界的にも珍しいとの指摘がある。

 日本スキン・エステティック協会の清水京子さんによると、江戸時代では処理をしていたのは遊女が中心で、広く普及はしていなかったとみられるという。

 ただ、この時代の浮世絵のほとんどには体毛が描かれていない。清水さんは「体毛が少ない方が好まれていたのでは」と分析する。このころには、軽石を砕いて油とまぜ、手足にすり込んで摩耗させて毛を切る脱毛法がすでにあったという。

拡大する写真・図版除毛クリームや脱色クリームなど、自己処理にも様々な方法がある

 体毛の処理が一般的になったのは、ミニスカートやストッキングが流行した高度経済成長期の1970年代ごろ。美容脱毛サロンが登場したのもこのころだ。2000年代にはさらに市場が広がり、手頃に脱毛できるようになったことから、清水さんは「毛がない方が当たり前になってきた」とみる。海外の事情は国によって異なるものの、「脱毛がこんなにブームになっているのは、日本の特徴と言えるかもしれない」と話す。

皮膚科医は「リスクもある」

 「むだ毛」と呼ばれることもあるが、人間にとって本当に無駄なのだろうか。

 ウォブクリニック中目黒(東京)総院長で皮膚科医の高瀬聡子さんは、「むだではない、と本来は言えると思います。ただ、日本や先進国では毛をなくしたからといって生命維持に大きな影響はない」と話す。

拡大する写真・図版ウォブクリニック中目黒の高瀬聡子総院長=株式会社ハイサイド提供

 例えばわき毛は、汗を蒸散させ、その気化熱で体温を下げる役割がある。「ただ、生えていない人でも機能はほとんど下がらず、多くの人が処理をする中でも特に大きな問題になっていない」と言う。

 一方で、高瀬さんは「慎重に処理をした方がいい部位もある」と注意も促す。アンダーヘアだ。「毛が生殖器官をウイルスや細菌などからブロックしている。毛をなくせば、その機能の一つが減る。研究のデータはまだないが、感染症などのリスクが高まる可能性はある」と話す。

    ◇

「自分の価値観で決めよう」

 体毛の処理について、考えが変わった人もいる。

 むだ毛処理をテーマにした楽曲「エビバディBO」を18年に発表したラッパーのあっこゴリラさん。「はみ出したとこがきみの才能」と歌い、ブログには緑に染めたわき毛の写真を載せた。「なんで毛が生えているとだめなんだろう」と思ったのが、曲作りのきっかけという。

 「生やしたいときに生やして、そりたきゃそりゃいい」。そう話すあっこゴリラさん自身、学生の頃は「ツルツル絶対正義」と思っていたが、今は、処理するかしないか気分で決めているという。

 「自分の価値観のものさしを作って、なにを選ぶのか。みんなが、自分の世界の王様・女王様になることが大事だと思います」(田部愛)

困りごとや疑問、募集しています

 「#ニュース4U」では身近な困りごとや疑問の投稿をお待ちしています。ツイッターでハッシュタグをつけてつぶやいてください。LINEはID「@asahi_shimbun」かQRコード、もしくはこちらのリンク(https://line.me/R/ti/p/%40asahi_shimbun別ウインドウで開きます)で「友だち追加」をすると、取材班とやりとりができます。朝日新聞デジタルに特集ページ(https://www.asahi.com/special/n4u/)があります。