女子生徒の制服「スラックス」 選べる県立高校が増加中

浜田綾
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 トランスジェンダーへの配慮、寒さ対策、動きやすさの向上、「スカートを着たくない」という嗜好(しこう)の尊重……多様な理由から、女子生徒が制服購入時にスラックスを選べる宮崎県立高校が増えている。導入に数年かかるとされる制服選択制度。その現状を探った。(浜田綾)

 本庄高校(国富町)は今年度、制服を26年ぶりに一新した。スクールカラーであるえんじ色のジャケット、ひざ丈スカート、薄いチェック柄のスラックスのほか、リボンやネクタイなどの小物もすべて新しくした。夏服にはポロシャツを採り入れた。

 生徒は、この中のアイテムを自由に組み合わせて通年を過ごす。新制服に性別による区分はなく、購入申込書でも問われない。

 校内で制服刷新の議論が始まったのは3年前だ。定員割れの状態が10年以上続き、学校改革に迫られていた。同校は総合学科で、2年次に四つの専門コースに分かれる。学ぶ内容や履修科目を自主的に「選ぶこと」が特色だ。複数の留学生が在籍し、さまざまな価値観を受け入れる土壌もある。そうした独自性を踏まえ、「選択できる制服」の導入も進められた。

 小玉和清教頭は「性的少数者への配慮だけを目的にしたわけではなく、『多様性』を大切にしたかった」と話す。女子生徒の中には、防犯や防寒対策としてスラックスを望む声があった。「『スカートを着たくない』と思う生徒もいる。一人ひとりが快適に、自分らしく学校生活を送る環境にしたい」という。

 新しいポロシャツは白と紺の2種で、生徒が自由に選ぶ。小玉教頭は「どちらを着ても、選んだ理由なんて誰も聞かないですよね。リボンとネクタイ、スラックスとスカートも同じことだと考えています」。

 夏冬兼用スラックスとスカートの価格差は、夏服と冬服でそれぞれ1千円と300円に抑えた。自転車通学の生徒が多く、「寒い冬には購入者が増えるかもしれない」と見ている。

 都城泉ケ丘高校(都城市)は昨年、制服選択制の検討委をつくり、来年度の導入をめざす。他校の状況や時代的な背景を考慮し、選択制への移行を決めた。

 久保田一史校長は、高校のウェブサイトで「社会は確実に変化しています。多様性を受け入れる社会を目指し、求める人間像や人生観も変化しています」「自分や他者を尊重でき、社会で活躍できる生徒の育成を目指しています」などと経緯を説明する文書を発表。「目的や意義の不明なもの、変える必要があるものは見直しが必要。社会の変化に対応していく第一歩として、女子制服にスラックスを導入します」とした。

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 県立高校のうち学校指定の制服があるのは、宮崎東(宮崎市)と延岡青朋(延岡市)を除く36校(五ケ瀬中等教育学校も含む)。朝日新聞が調べたところ、その過半数が、女子生徒がスラックスを選べる制度を導入済みか、導入を予定・検討していることがわかった。

 すでに制服選択制を採り入れたのは、宮崎農(宮崎市)、本庄(国富町)、都城農(都城市)、都城商(同)、高城(同)の5校。佐土原(宮崎市)、日南振徳(日南市)、門川(門川町)の3校は制度を持たないが、生徒から申し出があれば個別に対応している。来年度の導入を予定する高校は7校、時期は未定ながら導入を検討中の高校が9校あった=表。

 選択制を導入したり検討したりしている高校の担当者に理由を聞くと、「性的少数者への配慮が必要」が最も多かった。そのほか、「生徒や保護者から要望があった」「防寒対策や機能性向上のため」「時代の流れや社会的ニーズを受け止めた」「生徒の出身中学や他校の状況を考慮した」などがあった。

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 〈トランスジェンダー〉 性的少数者のうち、生まれたときの性別と自認する性別が異なる人。なかには、心と体の性が一致しないことが原因で苦悩状態が続く「性同一性障害」と診断される人もいる。