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 新型コロナウイルスによって、大学生の生活も一変しました。オンラインに偏る日常の中で、学生が巻き込まれやすいマルチ商法や薬物(クスリ)、カルト宗教による勧誘などの現状はどうなっているのでしょうか? 学生相談の担当者に聞きました。

マルチ「自信ある」学生ほど落とし穴

 今年3月、消費者庁と東京都は、投資用の高額USBメモリーを販売したなどとして、特定商取引法違反(不実告知、迷惑勧誘など)で東京都の訪問販売3事業者に業務停止を命じたと発表した。

 明治大学の学生支援事務室で学生が巻き込まれるトラブルに対応する高島尚行さんによると、こうした「USB商法」が大きく問題化したのは2018年のことだという。

 「マルチ商法は一定周期で問題化するが、収束した後の警戒心が薄くなる時期を狙って急拡大する傾向がある」

 「USB商法」について高島さんが問題視するのは、LINEなどを悪用したオンライン化の手口だ。

 「マニュアル一式がLINEで送られてきて、学生ローンの借り方まで書かれてある。その通りに手続きをしてしまうと、お金を借りた感覚がないまま、送金をしてしまう仕組みになっている」

 18年当時は、気の弱い学生を追い込んでお金を送らせるケースが目立ったが、一段落した今、深刻化しているのは「だまされていることに気づかない学生」だという。

 「だまされているという意識がなく、自分にお金を稼ぐ力があると過信している学生ほど、深みにはまりやすい。自分から積極的に動いてしまうので、気づけないまま、友人らを勧誘してしまうケースがある」

 大学では、1人で契約まで決めず「持ち帰って考えます」と伝えるなどして、親や大学などに相談するようアドバイスしているという。

「一人暮らし」が招く飲酒リスク

 薬物については、違法であることから大学に相談する学生は少ないのが実態だという。

 一方で、学生相談室で学生生活の相談受付を担当する高橋さんが薬物と同時に心配するのが飲酒だ。

 「たとえば、一人暮らしを始めたばかりの学生は、適正な飲酒の量がわからないまま、お酒によって体も生活も乱されてしまうことがある」

 未成年の場合、適正な量がわからないまま、どこでも買えてしまうことから、アルコール依存症になるリスクが高いという。

 高島さんによると、サークルなどの“断れない状況”で生まれるトラブルもある。学生団体の幹部学生向けには、アルコールの強要させないための講習をしているという。

 「講習会ではNPO法人が作成したイッキ飲みでお子様を亡くされた遺族による証言映像なども流している。お酒との付き合い方を間違えると命に関わる恐れもあるという現実を伝えていくことが大事」

 同大では、“通報”の窓口をつくり、情報提供も呼びかけている。

 「最近ではメッセージアプリにアップロードされた写真や動画をもとに大学へ相談をしてくれる学生もいる。相談があった際には、大学として一つ一つ事実関係を確認し、指導をしている」(高島さん)

カルト「複合的」実はお金目当ても

 1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件でも注目された大学でのカルト宗教の勧誘。最近では「構造が複合的になっている」という。

 「『就活に有利』などと言って学生を勧誘するケースでも、目的はマルチ商法のお金目当てであることも少なくない」と高橋さん。

 カルト宗教じみた会則を持つイベントサークルでは、幹部の大学生がメンバーの学生に会費などを強要する事件も起きている。活動が学外になると大学では実態を把握できないケースも多い。

 高橋さんは「安易に連絡先を教えないなど、基本的な注意点を伝えている」と話す。

やめていい、逃げていい

 高橋さんが心配するのは、講義がオンラインになったことで生活に「雑談」がなくなっていること。そのため、学生相談室として、幅広いジャンルのオンラインイベントを企画しているという。

 ストレス対策の講座のほかにも、料理や旅行など、気軽に参加できるテーマで40回のイベントをオンラインで実施してきたという。

 「学生相談室に行くのは『最終手段』みたいに大げさに思っている学生もいる。海外ではカウンセリングは当たり前。就活や留学など別の相談窓口とも連携して、気軽に使ってもらえる工夫をしていきたい」と高橋さん。

 高島さんが強調するのは「今いるコミュニティーの居心地が悪いと感じたのならば、思い切って環境を変えるという視点も大切」ということ。

 「例えば明治大学には300をこえるサークルがあり、多くの団体が通年で部員を募集している。閉鎖的なコミュニティーで人付き合いを続けていると視野が狭まり、自分を追い込んでしまうこともある。違和感を抱いたら思い悩む前に、大学や第三者に相談をしてほしい」