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取材後記・佐藤啓介

 「みなさんは新幹線の切符を買うのに、普段どれくらいかかりますか。私は3時間半かかりました」。SNSでメッセージを送り合うなかで、加賀明音(あかね)さん(23)はふと私にそう聞いた。同乗者の有無や移動中に必要な介助、車両の多目的室を確保できるか、車イスの大きさは室内におさまるか……。鉄道会社側としては、どれも安全を確保するため必要な確認事項。それでも加賀さんのような盲ろう者にとって、一人で移動することにどれだけ労力がかかり、自由を制限されるかという実情を、私は想像したことがなかった。

 数年前まで耳が聞こえていた加賀さんは、自分で言葉を発することができる。初めて対面した日、指文字を通じて私の言葉を受け取り、ユーモアたっぷりに話す加賀さんの人柄に、「ちゃんと意思疎通ができるだろうか」という小さな不安はすぐに打ち消された。加賀さんの手のひらにカタカナを書くという方法で、直接語り合うこともできた。やりとりするたび、加賀さんが指先で感じている世界に触れる新鮮な発見と、同じ社会で暮らしているのだという確かな実感があった。

「普通」が取り残してきたもの

 コロナ禍で掲げられた「3密の…

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