【動画】誰ひとり取り残さない。誰かの犠牲の上にあった幸せ、限界に近づいた地球環境。これらを変えるために、今、私ができることは。
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 「みなさんは自転車にどのくらい乗っていますか。排ガスも出さず、電気も使わない。二酸化炭素の排出が抑えられ、気候変動を食い止めることもできる」

 都立国立(くにたち)高校の山田真央さん(17)は昨年12月8日、ツイッターやインスタグラム、フェイスブックに書き込んだ。

 山田さんは、国連で2015年に採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の達成を目指す高校生の団体「50cm.(センチ)」のメンバーだ。団体名には、自分の手が届く身の回りの50センチから変えていこうという思いが込められている。

 以前は街頭でも活動していたが、新型コロナウイルス禍で難しくなり、昨年8月からは16人のメンバーがそれぞれの視点で見つけたSDGsの身近な話題を毎日投稿している。ツイッターとインスタグラムを合わせてフォロワーは1500人を超えた。

 同世代には、スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさん(18)がいる。3代目の代表の都立南多摩中等教育学校5年の宮寺勝大(まさひろ)さん(17)は「全員がグレタさんになる必要はない。他の人が部活動やアルバイトをするように、自分はSDGsに取り組んでいるだけ。自分たちの行動が少しでも社会に貢献できたらいい」と話す。投稿を見た人の行動が変われば、10年後の地球は変わる、と考えている。

フィリピンで受けた衝撃

 原体験は、中学2年の夏休みで訪れたフィリピンの光景。裸足や上半身裸のストリートチルドレンが駆け寄ってきた。不衛生な建物が並ぶ風俗街では、水もでないと聞いた。スマートフォンの翻訳機能を使って現地の人たちとコミュニケーションを取り、自分の環境との違いに衝撃を受けた。自分に何ができるのか、と考えた時に「SDGsの普及が世界の不平等を解決するきっかけになるのではないか」と思い至った。

 投稿以外にも、できることをやっている。宮寺さんは学校にマイボトルを持って行く。それでも、飲み干すとペットボトルを買うこともある。ふたを洗ってとっておき、1カ月でたまった数に100円をかけた額を自身の小遣いからユニセフに寄付している。

 そんな活動の輪は少しずつ広がっている。青山学院高等部2年の常広珠実さん(17)はインスタグラムの投稿で「50cm.」を知った。「高校生でもSDGsに取り組めるのか」と刺激を受け、加入した。

 「私1人では何も変わらないと思わず、できることをこつこつ、を意識することが大切」

 同級生の一甲(いっこう)夏希さん(17)は常広さんの投稿を見て、「同じ高校生がこんな発信をしているのか」と興味を持った。「50cm.」のSNSをフォローしたものの、最初は何をすればよいか分からなかったという。

グレタさん主導のデモで痛感

 だが、「少しの意識で未来を変える」と書かれた投稿を見て、周囲に伝えることも大事な行動だと考えるようになった。家族と話してみたら、母はSDGsを知らなかった。「親の世代や同世代と、積極的に話していきたい」と話す。

 「50cm.」は、横浜国立大学1年、入江遥斗さん(19)が高校生だった2018年、生物の授業でSDGsを知ったことをきっかけに立ち上げた。環境問題などに取り組むと「意識高い系」と言われ、なかなか耳を傾けてもらえないこともある。同世代と一緒に考えようと知り合いに声をかけて立ち上げた。

 今、グレタさんが呼びかける「未来のための金曜日」(FFF)などで活動する音大1年の黒部睦さん(19)は、入江さんに声をかけられて「50cm.」に加入した初代メンバーの一人。多くの後輩たちに影響を与えている。

 日本青年会議所が主催する少年少女国連大使に選ばれ、南多摩中等教育学校6年生だった19年にスウェーデンを訪ねた。市役所前では毎週金曜日、グレタさんが主導するデモがあり、10代から高齢者まで多くの人が参加していた。テレビの向こう側の出来事だと思っていたことに参加する同世代の姿を見て、自分も何かしないといけないと痛感した。

 帰国後、中小企業の社長たちを前に、SDGsに取り組む必要性を訴えたが、反応は「頑張ってね。応援しているよ」。当事者意識を持ってもらうことができなかった。一方、学校で体験を講演すると、多くの生徒たちから「私も何かしたい」と声をかけられた。大人たちとの感覚の差を痛感した。「教科書で習うより、同世代がメッセージを伝えた方が伝わるはず」と考え、動き始めた。

 毎週金曜日に学校を休んでデモをすることはできないため、自分のロッカーに気候危機やSDGsの知ってほしいことをふせんに書いて貼り付けることにした。それを見た同級生や後輩たちも同調し、卒業するまでに約60人が同じ活動をしてくれた。そんな中から活動に加わる後輩も現れ、「50cm.」は21年で4年目を迎える。

 黒部さんは高校を卒業して「50cm.」を離れたが、SDGsには関わり続けている。

 気候変動への取り組みを訴えるため、今年4月に世界40カ国の若者が主導して開く音楽ライブの広報担当として、運営活動に参加している。より多くの人に気候危機や地球の現状を知ってもらいたい。「#ウチらの声で世界は変えられる」とSNSで発信を続ける。

 活動の範囲を「身の回り50センチ」から広げ始めた黒部さんはこう訴える。

 「この危機は、誰かを悪者にすれば解決する問題ではない。みんなで声を上げて、みんなで取り組まないといけない。一人ひとりにできることがあるんだってことを伝えていきたい」(阿部朋美)